出雲と東北のエミシ

瀬川さんの本でわかりにくい部分がある。

現代日本人のゲノム分析に触れた部分である。

東北北部の人は、本土人からはやや偏った遺伝子的特徴を見せています。ただしそれはアイヌとの関係を示すものではなく、むしろ出雲地方の人々と似ています。
斎藤成也は東北地方と出雲方言の共通性に注目し、この2つは弥生時代の一時期にかけて渡来した人々ではないかとしています。

むかし松本清張の「点と線」だったか「ゼロの焦点」だったかに「出雲ズーズー弁」のことが載っていのを覚えている。

「しかし、そこまで話を持っていくか?」という気もして、瀬川さんも岩波ジュニア新書『日本列島人の歴史』の記載をなんとなく紹介しているだけなので、紛らわしい記載になっている。


斎藤成也さんは57年生まれだから、米田さんより一回り上。同じ東大の生物を卒業され、米田さんのボスという関係にあるようだ。

ゲノム屋さんで一家をなした人らしく、それで啓蒙本にも手を出しているようだ。

「みんなの縄文」という膨大なサイトがあって、そこに斎藤さんのインタビュー記事がある(。テーマは「最新DNA研究と縄文人」というもの。

対談だから少々言い過ぎの傾向もあるが、要約を紹介する。

1.日本列島人の三段階形成モデル

現在の日本人は北部や南部の混血が進まなかった地域を除き、縄文人と弥生人の混血であるというのが「二重構造説」である。

私は、これを改変した「三段階形成モデル」を提示したい。つまり渡来民を第二段階と三段階に分けたものである。

三段階説

これは私のC系人説ないし第2縄文人説とそっくりだ。経路は朝鮮半島、時期は紀元前3~2千年ころ。

ただし、縄文人を駆逐して日本人の基層をなしたというのは“?”だ。Yハプロで見る限り、そこまでの影響力はない。拡散範囲は九州北部から瀬戸内海沿岸、そして北陸にかけての日本海沿岸というところではないか。

もうひとつ、C系人はもっと早く、場合によっては縄文人より先着していた可能性も否定はできない。これは古代朝鮮の歴史がもう少しはっきりしないと迂闊なことは言えない。

これについては稿を改めたい。

エルヴィン・ベルツはヤマト人を東アジア北部から渡来した長州型と東南アジアから渡来した薩摩型に分けました。三段階モデルにあてはめると、長州型が第三段階渡来民の子孫、薩摩型はもっぱら第二段階渡来民の子孫に対応するかもしれません。

という一節があるが、斎藤さんの議論の特徴(大風呂敷)を示唆している。「核心」となる専門分野での発言は注目に値するが、辺縁分野での発言は相当眉に唾して聞かないと危ないということだ。

2.出雲方言に関して

第二段階が今の言語を伝えているのではないかと現在、思っています。出雲地方と東北地方の人々の間に遺伝的な共通性が存在する可能性もでてきました。出雲の方言と東北の方言が似ていることが以前から指摘されています。

さすがに、

言語の伝わり方は、とても複雑なのでいろいろ調べていかなければわからないことも多いと思います。

と語尾は濁しているが、“人類学における梅原猛”の素質は十分あると見た。医者によくいるタイプだ。いずれにしても、明確な根拠が示せない都市伝説的な「言語学」の迷宮にはあまり深入りしないほうがいいと思う。