1.日韓関係を見る視点

日韓関係には二国間関係一般に解消されない特殊性がある

A) 旧帝国と旧植民地の関係

B) 分断された一方(戦争当事国)との関係

C) 「6カ国の枠組み」の中の関係


日本ではともすればA) の関係が強調されがちであるが、むしろその特殊性はB) によって規定されている。

それはさらに日米同盟、米韓同盟の盟主である米国のアジア政策(外在要因)に大きく左右される。

朝鮮半島を中心とする東アジアは、依然として朝鮮戦争以来の「冷戦構造」の枠組みにとらえられており、朝鮮戦争に参加した南北朝鮮、米、中、日、ロシアの角逐という状況は変わっていない。

この中で、日韓の関係も時に尖鋭化されざるをえないのである。

日韓関係はこういう構造の中で考察されなければならない。


と、ここまではある程度は分かったつもりでいた。しかし、B) の意味がこれまで深く吟味されてこなかった。そのことが南さんの指摘するところである。

南さんはこう語る。

こうした理解はだいたい合っているんですけど、そこには少し欠落したものがあるんじゃないか。


読んでいるときにはスラスラと読み進んだが、いざノートを取ってみると、やはり以下の一節は飲み込み難い。

韓国は戦場国家という状況にあります。それは冷戦でなく、戦争でもなく、だからといってもちろん平和でもない曖昧な状況、すなわち休戦という状況です。

これは、いつでも戦争になれるような、しかし戦争はしていない状況です。そしてその状況のもとで日本では基地国家という形の国家が出来上がっており、これがいまだに続いている、というのが私の基本的認識です。

果たしてそうだろうか。

たしかに深層にはこれらの地政学的事実は貫かれている。だからこれらの冷厳な事実を直視せよという論理もわかる。

しかし政治のリアリズムというのは果たしてそのようなジャングルの掟にのみ規定されているのであろうか。

むしろ人類が持つ野獣性を否定する過程の上に近代国家が乗っかっているのであって、近代社会というのはたとえ薄皮一枚であってもジャングルの掟を否定するところに存在するのである、

たしかにこの議論は、韓国の日本に対する異常なまでの民族主義的気分を説明するのに有効な根拠になる。しかし我々は基地国家としてみずからを位置づけるつもりなどサラサラない。