この場をお借りして私の最近の勉強の一端を介する。

それは東芝問題。すでに2、3年前から大問題になっているが、私の調べたところでは東芝はだまされたといえる。(しかしそれは欲の皮が突っ張ったからで、同情の余地はない)

ウェスチングハウス社というのは、1970年代まではゼネラル・エレクトリックと肩を並べる総合家電メーカーだった。それが斜陽になり21世紀を迎えることなく消滅してしまった。しかしこの会社は軍事産業としてのもう一つの顔を持っていた。世界初の原子力潜水艦ノーチラス号から始まって、原子力空母エンタープライズなどすべての原子力艦の原子炉を生産している。この部門がいま問題になっているウェスチング原子力会社である。一応軍事産業部門は独立しているが、基本のノウハウは同じである。

この会社はえらく金食い虫で、単体での経営は困難だ。そこでイギリスの電力公社が買い取ったのだが、イギリスそのものがなかなかうまくいっていないこともあり、売りに出したのが事の始まりだ。

これに東芝が跳びついた。東芝としてはこれまでの軽水炉に加え加圧水型原子炉の技術も手に入るから、原発の一手販売が可能になる。その頃は『原発ルネッサンス』と言われ原発が成長部門と考えられていたこともある。買い取りの条件はウェスチングハウス社の持つコア技術には一切手を付けないということだ。東芝は経営責任を持つが、営業権のみの権限しかない、という誠に奇妙な合弁が成立した。

これには裏がある。米軍にすれば現代戦の最強の兵器である原潜や原子力空母の心臓部が他国のものとなるのは非常に困るのだが、維持するだけの金もない。そこで最初はイギリスに押し付けたが、イギリスが蹴ってしまった。そこで仕方なく日本に押し付けることにした。『金は出せ、しかしコア技術は渡さないぞ』ということだ。そこで経産省が乗り出した。『アメリカの要求を丸呑みしてもなおかつお釣りが出ますよ』という話で日本の各社に当たった。各社といっても原発に関して実績があるのは三菱重工、日立電機、東芝の3社しかない。

ここで登場するのがゼネラル・エレクトリックだ。実は一番WH社を欲しかったのはGEである。GE自体も決してただの電機メーカーではなく、原潜や原子力空母の原子炉を作っている。以前は軽水炉しか作れなかったのが最近では加圧水型の技術も身に着け、いまや原潜の原子炉はすべてGE製となった。しかし原子力空母では未だにWH社の後塵を拝している。だからWHは喉から手が出るほど欲しいのだが、米国の独占禁止法がそれを許さない。そこでダミーとして東芝を利用しようと考えた。東芝は軽水炉技術を通じて自分の子分になっていると考えたからだ。

此処から先は当て推量になるが、どうも東芝はGEに逆らったのではないか。さらに言えばGEの意向は米軍の意向だということを理解していなかったのではないか。

頭にきたGEは日立も巻き込んで価格操作した。これを当時のブッシュ大統領も後押しした。お陰で買取価格は数倍に膨れ上がりとてつもない『のれん料』を支払わされる羽目になった。

そこへもってきて福島原発だ。天井に登って梯子を外されて真っ逆さまに墜落してしまった。これが東芝の経営破綻の本質である。アメリカの軍産複合体の力をなめたのが命取りになったといえるだろう。

結局ヤクザな商売に手を出したのが東芝の命取りとなった、日本の電機産業のある意味では最後の砦と思われた東芝が潰れる場面を、我々は目前に見ている。ソニーもナショナルもシャープもすでにガタガタだ。今回の事件がなくても、いずれ遅かれ早かれ東芝も同じ道を辿ったかもしれない。それは日本電機産業の最後のあがきであったかもしれない。

だがそれで良いのだろうか。日米軍事同盟路線が日本経済を奈落の底に貶めるのを、我々は傍観していてよいのだろうか。いまや独立・平和の政治・経済路線を真剣に考えるべきときなのではないだろうか。