それにしてもオパーリンとは懐かしい名前だ。北大薬学部の石本真さんが翻訳したのだ。石本さんの講義をひたすらありがたく聞いた覚えはあるが、「コアセルベート」という言葉を除いて中身はさっぱり覚えていない。

あの頃は、「社会主義」の優越性を示す科学が大々的に宣伝されていた。医学部にも「ソ医研」というサークルがあって、西洋医学とは異なる医学のあり方が語られていた。

朝鮮人民民主主義共和国のキムボンハン先生の血管系、神経系に次ぐ第三の「経絡系」説も、「これがツボだ」という不鮮明な光顕写真を見ながら、かしこまって拝聴したものだ。

武谷・坂田の三段階論、パブロフ・ミチューリン・ルイセンコの心理学…それらが毛沢東の矛盾論とごたまぜになって語られた。そういう時代があった。一体あれは何だったのだろう。