1.原始生命体(Protobiont)の規定

最初の生命は原始生命体(Protobiont)と呼ばれる。遺伝子的さかのぼると古細菌および真正細菌の共通祖先が最初の生命となるが、それ以前にも生命体が存在した可能性があり、これをふくめて原始生命体の名で一括する。

生命体の基準は、①代謝系を有する。②細胞という形状を有する。③自己複製が可能である。という三条件である。

ただしこれは「完全な生命体」の三条件であり、3つを満たさない「不完全な生命体」も存在しうる。(例えばウィルス)

そうすると①代謝系を有する。というのが不完全であろうと生きている最低限の証かもしれない。

人間で言えば「息をしている」ことが、生きていることの最低の証であるようなものであろう。

2.原始生命体(Protobiont)の代謝

代謝系は古い順に次のような順序で積み重なっていると考えられる。

①発酵: 解糖系を含めた最もコンパクトな代謝系、成立年代も早いと考えられる

②嫌気呼吸: 酸素呼吸の祖先型であるとされている

③酸素呼吸: 光合成よりも古い時代に成立(35億年前に成立していたと考えられる)

④光合成: 約27億年前に成立

ということで、当然ながら原始生命体における代謝の基本は解糖である。解糖の基本はエムデン・マイヤーホフ回路で、ATPの産生であるが、これには異型もあるようである。

3.原始生命体(Protobiont)の栄養

おそらく「生命とは隊白質の存在のあり方だ」というエンゲルスのドグマの一番の弱点はここにある。

たしかに解糖系のキーロールを握っているのは酵素でありまさに蛋白という形で生命は存在している。

しかしこの酵素を回してやるには外からエネルギーを取り込んでそれを酵素が働きやすい形で解糖経路に突っ込んでやらなければならない。

蒸気機関には釜炊きが必要なのである。そしてこの釜炊きこそが生命なのである。

この釜炊きプロメテウスは、おそらくは海底に噴出する熱水からエネルギーをもってくる。そしてリン酸化回路に火をくべるのである。

初期の酵素は相当熱効率が悪かったろうから、数百度の熱水のエネルギーなしでは回らなかったろう。

命をかけた釜炊きプロメテウスの行動があって初めて生命の維持が可能だったのではないか。

オパーリンは、おそらくはエンゲルスの影響を受けて、蛋白始原説に立っていたと思われる。彼は「最初の生命は原始海洋中に既に存在していた有機物を代謝する従属栄養を営んでいた」とする。

原始海洋中に既にアミノ酸をふくむ有機物が存在していたことは事実である。だから構造的観点からはオパーリンの仮説は成立しうる。

しかし肝心なことは「構造」ではなくそれを動かす動力である。