2016年12月20日先カンブリア紀 年表 を作成。2017年02月03日 に1回増補している。
今回、2回めの増補を行うことにする。
柴正博「はじめての古生物学」(東海大学出版部 2016)とポール・デーヴィス「生命の起源」(明石書店)、ピーター・ウィード他「生物はなぜ誕生したのか」(河出書房新社 2016)を読んだことが理由である。ただし3冊目はまだ読みかけで、読み終わればさらに追補が必要となるかもしれない。
いろいろな書物からつまみ食いしたせいで、相互に矛盾する記載もあり、何が何やらわからなくなっている。いずれ何かの本で一本化した上で、矛盾するものについては「異説」として掲載する方向で考えている。
2017年9月10日、杉谷健一郎「オーストラリアの荒野によみがえる原始生命」(共立出版 2016)を読んだ。題名の印象とは異なり、かなり原始生命全般の解説も展開されており、しかも非常に読みやすい。「論争」の絶えない分野ではあるが、節度のあるレビューとなっていて共感できる。ただし学術論文でないせいもあり、年代表記は必ずしも厳密ではない。こういう文章が年表作者を一番困らせる。
面倒なのと、画面がごちゃごちゃすることから「…億年前」の表記を省くことにする。45と書いてあれば45億年前のこととする。
地球と生命の時代区分にはさまざまなものがあり、しかもかなり変遷している。別記事を参照のこと。
地学的情報は最小限にとどめ、生物の進化を中心に展開する。年代は文献により異同がある。年表に書き込んだあと否定された事実もある。疑えばすべてが疑わしくなる世界だ。適当にあしらっている。
杉谷さんの本では、全体の流れは下記のようになっている。(クリックで拡大)
138 ビッグバン。宇宙の誕生。
冥王代(46~40)
46 太陽系の形成が開始。星間物質が再結集し太陽系の誕生、
45 小惑星の集合(衝突)により原始地球が誕生。以後数億年は無生命の時代が続く。これを冥王代と称する。
表面から千kmの深さまでは溶けた状態で、マグマ・オーシャンを形成、重い金属は地球の中心部に沈み核を形成する。 |
44.6 原始地球ができて4000万年後に「ジャイアント・インパクト」が発生。火星並みの惑星が衝突し、地球と月が分離する。その他にも頻回に天体衝突。
43 地殻構造が安定する(地殻-マントル-外核-内核)。
41 後期重爆撃が始まる。38億年ころまで続いたとされる。地球外生命説の根拠になっている。
41 大気温の低下により多量の降雨がもたらされる。原始海洋が形成され、地球のほぼ全表面を覆う。海洋の拡大に伴い地表が出現する。
原始海洋: 原始大気に含まれていた水蒸気が温度低下によって凝結したもの。初期は亜硫酸や塩酸のため酸性、陸地の金属イオンが雨とともに流れ込んで中和される。 |
太古代(40~27)
ここが諸説紛々として、一番書きにくいところである。いちおう原理的に説明する。
1.生命が存在する場所は地面に接している。当時の大気中では生命は維持できなかったから、それは海底であったに違いない。 2.海底の地面の上であれば、それは層状に堆積するに違いない。3.したがって、その後の熱や圧力による変性を受けずに残っている堆積岩があれば、その中に生命体の痕跡がのこている可能性がある。 ということで、そういう堆積岩探しがまずは最初の仕事となる。 つぎに、そういう堆積岩から生命活動の痕跡をどう探し求めるかという話になる。 それが炭素同位体をもちいた「同位体化石」の発見である。これについて説明する。 1.生命の基本は代謝である。何をエネルギー源とするかは別にして、代謝の結果、無機炭素から炭素化合物(有機物)が合成される。 2.その際、生物は普通の炭素(13C)より軽い同位元素(12C)を選択的に取り込むのだそうだ。なぜかということはこの際省略。 3.したがって、それらしき試料を持ってきて遠沈すれば 12C/13C比がもとめられるから、それがただの石ころか生命体の痕跡なのかが分かる。 という寸法だ。 もしそれが「同位体化石」であると証明しようと思えば、まずそれが発見されたのがコンディション良好な堆積岩の中であったことを証明し、その上で同位元素組成の分析方法と結果を明示しなければならない。 |
38 3億年続いた後期重爆撃期(Late Heavy Bombardment: LHB)が終了。これに伴い安定した海洋が出現。これ以前の堆積岩は存在しないとされるため、生命活動の証明手段はない。
杉谷さんの本では、40億年前に現存する最古の堆石岩(カナダのアカスタ)が形成されたという。地球上のすべての岩石が後期重爆撃による変性を受けていると思われるが、それを免れたものもあったということか。 |
38 最古の生命の痕跡(同位体化石)が形成される。グリーンランドで発見されたものが最古とされる。これを画期とし、それ以前を冥王代、以後を始生代と称する。
これに前後するものとして20件余りの報告があるが、グリーンランドのものをふくめ確実なものはない。まぁ、このへんだろうというところ。 |
38 真正細菌(バクテリア)と古細菌(アーキア)の出現。両者は異なるものであり、共通祖先(LUCA)が想定されている。
この記述は素性不明。これは下記の記述と関連する。 |
37 グリーンランドで確認しうる最古の生命痕跡(濃縮12C)が発見されている。(Rosing 1999)
35.4 西オーストラリアで最古のストロマトライトが形成される。
ストロマトライトは光合成細菌などが浅海域に層状に積み重なって形成された化石とされる。メタン生成代謝によりエネルギーを発生した痕跡があり、古細菌の一種メタン生成細菌によるものと推定されている。硫酸還元菌の存在も推定されている。これらは熱水噴出孔の周辺で生息していたものとされている。 |
34.6 最古のシアノバクテリアからなるストロマトライトがオーストラリア西部で形成される。
34.2 南アフリカで酸素非発生型の光合成を行う微生物のマット状構造が確認される。真正細菌の一種Chloroflexus の仲間と想定される。
32.4 大型球状微化石が形成される。確実に現生生物と比較できる糸状構造をもつ微化石。シアノバクテリアはその後発展を続ける。数珠状の群体形成(糸状体)、粘質による鞘形成、運動能力の獲得、窒素同定とアンモニア形成能の獲得、休眠胞子の形成、死滅細胞からの炭酸カルシウムの摂取による骨質形成など。多方向への発達と多様化。 |
32 光合成生物が発生。光合成をする最初の生物。シアノバクテリアとは別種と考えられている(水を使わず硫化水素等を用いるため酸素は発生しない)
28 地球に強い磁場が出来る。太陽風のバリアとなり、有害な粒子をさえぎるようになる
原生代 (27~7)
27 火成活動が活発化し大陸が形成される。
27 好気性細菌が登場。酸素の持つ高エネルギーを活用した肉食性バクテリアの起源となる。
25 最初の氷河期が到来。
この出来事をOxygen Catastropheと呼ぶ。
25 海中の鉄が三価鉄化を完了し、鉄イオンの酸化のために消耗される酸素が減る。このため海中および大気中に酸素が増加する。酸素は紫外線と反応しオゾン層を形成。
23 藍藻(シアノバクテリア)が大量発生する。酸素発生型光合成を行い、海中および大気中に酸素を供給する。
酸素カタストロフィ: 酸素は大部分の嫌気性微生物にとって有毒であった。このため多くが絶滅する。生き残ったものは大気に触れない環境で暮らすようになった。 |
22 マクガニン氷河時代。全球が凍結。全球凍結は、この他に7億年前、6億年前の少なくとも3回生じている。この頃の酸素濃度は現代の1%程度。
21 最古の多細胞化石が形成される。
20 細胞核を持つ真核生物が出現。ただし確実な試料としては12億年まで下る。元の細胞は好熱菌(小細胞)で、原核は核膜内に収納され、細胞質は他細胞に公開される。ミトコンドリアを持つ好気性菌、葉緑体を持つシアノバテリアが細胞質内共生。
19 激しい火山活動により、最初の超大陸(ヌーナ大陸)が出現する。その後、大陸は数億年程度の周期で離散集合を繰り返す。
12 真核生物が多様な形態で発展。とくに真核藻類がシアノバクテリアと並び繁殖。このころ海中の酸素濃度が現代の水準に近づく。
8 最古の多細胞動物オクビア(カイメンの一種)が登場する。襟鞭毛虫(原生動物)が多細胞化したものとされる。原口の形成により強力な捕食能を獲得。藻類の産生するバイオマットを食料とする。
7 2回め(7億年前)と3回目(6億年前)の全球凍結
6 地球の気候的環境が大変化。地上が現在と同程度の酸素濃度になる。オゾン層が形成され、有害な紫外線が遮断される。超大陸が分裂して新しい海洋が形成される。
ここまでが、生物の「前史」。先カンブリア紀と一括されることもある。
顕生代ー古生代
5.7 顕微鏡的生命体が形成される。エディアカラ生物群と呼ばれる。①軟体性である。②捕食性がない。③眼がない、などの特徴を持つ。
5.4 生命体化石が一気に増加し、大型多細胞生物(クラゲ、イソギンチャク)が出現する。骨格を持つ生物も現れる。「カンブリア爆発」と呼ばれる。カンブリア爆発前を「先カンブリア紀」、爆発後を「顕生代」と称する。顕生代は古生代→中生代→新生代に細分される。
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