そこに一石を投じたのが 自動車評論家の国沢光宏さんが書いた「福岡の暴走事故、フロアマット2枚だけが原因ではない」である。12/10(土) 21:14の投稿となっているから、一通り報道が出回ったすぐ後に書かれたものと思われる。
国沢さんが真っ先に指摘するのは、「福岡県警に思い込みがあるのではないか」ということである。
そう言われると、北九州の病院での「爪剥ぎ事件」で、看護婦さんを1ヶ月も拘置所に閉じ込めて無理やり有罪に仕立てたのも福岡県警の「思い込み」だったね。
この後の話はかなり専門的になる。
1.ブレーキ・オーバーライド
プリウスには、「アクセルとブレーキを同時に踏んだらブレーキを優先させましょう」という仕組みが導入されている。 これが「ブレーキ・オーバーライド」と呼ばれるシステムだ。
だからアクセルペダルにマットがかぶさっていたとしても、ブレーキを踏めば止まるはずだ。
2.アクセルがマットに引っかかる確率は低い
アクセルを目一杯踏み込まない限りアクセルペダルがマットの下に挟み込まれることはない。事件の発端、すなわち公園で暴走が始まったときの状況からは、このような事態はきわめて考えにくい。
3.負圧に頼らない強力なブレーキシステム
プリウスには、負圧(アクセル戻した時にブレーキ力を高める装置)に頼らない強力なブレーキシステムが装備されている。マニュアル車におけるエンジンブレーキのことのようだ。
だから、どのような状況のもとでもブレーキを強く踏めば必ず止まる。「プリウスはそのくらい優れた車なのだ!」
ということで、国沢さんは警察のおかしな挙動にも触れている。
そもそも暴走事故の99%はアクセルとブレーキの踏み間違いか、フロアマットの引っかかりに起因する。自動車関係者ならどんなシロウトだってこの二つを疑う。なのに警察がフロアマットが2枚だったことを公表したのは本日。そしてブレーキ・オーバーライドの機能については未だ考慮に入れていない。
報道各社の動きは国沢さんの記事の後ばったりと止まってしまう。国沢さんの記事は正論だが、妖刀村正のようで、どちらにどう切れるのかが見て取れない。読みようによっては「プリウス、褒め殺し」ともなりかねない。だから途方にくれているのではないだろうか。
国沢さんは
いつまでも自動車ユーザーの不安を煽る情報ばかり流していないで、正しい事故原因の公表をお願いしたい。
と、警察にきついお灸をすえた上で、今後の原因解明に向けて以下の提言を行っている。
とにかくEDR(イベントデータレコーダー)の情報を開示すること。エアバッグが開いた事故は、必ずEDRに記録されている。
その中で重要な情報は
1)衝突時の速度。
2)アクセルの操作状況。
3)ブレーキの操作状況。
4)加速していたのか減速していたのか

という4種類の情報だ。
たしかに新聞でも「県警はEDRの解析を急いでいる」と書かれている。しかし、もし急ぐなら上記のデータはすぐにでも開示できるはずだ。あんたがたシロウトに「解析」しろとは頼んでいない。生データをそのまま公開しろということだ。それならすぐできる。
遅くなればなるほど、「何かを隠そうとしているのではないか」と勘ぐられることになる。福岡県警のためにも、それは好ましい事態ではないだろう。
*これとは別のデータもあるはずだ。
車両のセンサーが故障を 検知した際に車両の状態を記録する「フリーズフレームデータ」が 車内のコンピューターに残っている可能性もある。(毎日新聞 12/10(土) 3:00配信 )
ということだ。こちらはあくまで可能性だが…