むきばんだ東方に集団虐殺の跡

教育委員会のサイトには「むきばんだの時代」というページもあって、興味深い記事が見られる。

鳥取県気高郡青谷町の青谷上寺地遺跡で、大量の人骨(約90体以上)が発見されました。
これらの人骨は溝の中に折り重なるように散乱していた。

鋭い武器で刺されたり切られたりした傷跡の残る人骨、女性や10歳ぐらいの子供も含まれていた。

ウィキでは下記のごとく記載されている。

遺跡の東側の溝では弥生時代後期の100人分を超える約5,300点の人骨が見つかったが、うち110点に殺傷痕が見られた。

遺跡状況から、これらの人骨が埋められたのは紀元150~200年の間(弥生時代後期後半)と見られる。

どういう殺され方だったのかの記載はない。

鳥取大学の井上教授によれば、

外傷は背中や左半身に多く、矢じりが突き刺さった骨もあった。このため処刑されたというよりは闘いによるものと推定される。

人骨は溝に捨てられたりしたのでなく、戦闘の後に一カ所に集めて埋葬された後、人為的に掘り起こされた可能性が高い。

ということで、とりあえず妻木晩田は置いておいて、青谷上寺地遺跡に移る。

「あおや かみじち いせき」と読む。2008年に国の史跡に指定されている。

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鳥取と言っても倉吉との中間、「長尾鼻」と書いてあるところの西側である。


鳥取県教育委員会のサイトには、「あおやかみじち」の紹介ページもある。

青谷町は因州和紙の里として知られている風光明媚な地で、お酒などの醸造業も盛んです。

と言うから、そそられる。

遺跡は青谷平野のほぼ中央に位置し、JR青谷駅南側の住宅・工場地や水田の地下に埋もれています。

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大変わかりやすい図で、古代には砂州で仕切られた潟湖があり、そこに張り出した沖積地が遺跡の中心だ。何か見たことがある地形だと思ったら、山口の仙崎港と同じ構図だ。

港湾集落だった可能性もあり、古代中国や朝鮮半島製の金属器や、西日本を中心とした国内各地の土器が発見されている。地形の高かったところでは無数の土坑群やピット群が検出、周辺の低湿地部一部水田域が残されている。

ただし、発掘範囲内には住居跡や墓は見つかっておらず、画面下側の小高い地点がそれかもしれない。

いづれにしても典型的な低地型の弥生遺跡で、むきばんだとは対照的である。


むきばんだと青谷との関係を表にすると

妻木晩田と青谷上寺地を重ねて年表化すると、下記の如くなる

紀元前200年ころ(弥生時代前期末) 青谷上寺地の集落形成が始まる。

紀元0年ころ(弥生時代中期後葉) 青谷上寺地の集落が拡大し、大規模な護岸施設が作られ、出土品の量も増える。

紀元0~50年(弥生時代中期末) 妻木晩田遺跡に人々が住みはじめる。

紀元50年ころ(後期初頭) むきばんだの西側丘陵に環壕が形成。東側丘陵に四隅突出型墳墓群が形成される。住居群はそれより東の別の丘陵に形成される(そのほとんどが山の頂や尾根沿いに作られる)。

紀元150~200年(後期後葉) むきばんだ遺跡が最盛期を迎える。住まいの範囲は遺跡全体に広がる。それぞれの部落は3~5棟を1単位とする集団(クラン)を成す。

紀元200年(古墳時代前期初め) 青谷上寺地の集落が「突如として姿を消した」(ウィキ)。実にドラマチックな遺跡である。

紀元200年 この時期をさかいに、妻木晩田のムラは少しずつ衰えていき、古墳時代の初め頃には住まいがほとんど見られなくなる。

という経過だ。


県教育委員会の記述で最も重要なのは、青谷人が銅鐸人であったということだ。

青谷上寺地遺跡から見つかった「祭りのカネ」銅鐸は、小さな破片ですがその特徴から古い形のものと新しい形のものの、二者があることが分かりました。古い形のものは実際に打ち鳴らされた「聞く銅鐸」です。新しい形のものは、1メートルを超えるほど大型化し、にぎやかに飾り立てられた「見る銅鐸」です。

青谷と妻木晩田を素直に考え合わせれば、むきばんだの山城にこもった部族が、青谷の農耕民集落を攻撃し、破壊し、住民を集団虐殺したとも考えられる。あるいは共同の敵に敗れ、妻木晩田の方は落人集落を形成したのかもしれない。そのいづれなのかは、妻木晩田に銅鐸が見つかるかどうかで決まる。

むきばんだは生存競争を生きながらえ、発展し、やがて平地に移り住むようになる。それに伴い元の集落は自然消滅する。

青谷の民は抵抗の末に絶滅するか、逃げ延びて東を目指すか、むきばんだの連中の支配のもとに下ることになる。

こんな経過ではなかろうか。


あたかも古代日本のトロイ戦争が、勝者の側と敗者の側から浮かび上がってきたようだ。

ただし今のところ、これを弥生人(銅鐸人)対天孫族(新羅渡来のスサノオ系)、あるいは九州由来のアマテラス系という文脈に載せるだけの裏付けはない。