動物の生きるしくみ事典

「動物の生きるしくみ事典は、日本比較生理生化学会が進めるプロジェクトです」とあって、基本的には私の関心にピッタリ当てはまるようだ。

神経系の起源と進化

ニューロンの出現

記載にかなり枝葉が多く、話をわかりにくくし、誤解を生む。刈り取って引用する。

系統樹の最初に腔腸動物がいる。体中を網目状の神経網が走り、脳や神経節をもたない散在神経系をもつ。

腔腸動物以前の海綿動物門では、まだ、神経細胞は見られず、個体性も明確でない。

最初の特殊化した細胞、ニューロン(神経細胞)が現れるのは、腔腸動物の刺胞動物門である。


知らない言葉が出てくるので、ウィキで補う。

腔腸動物: クラゲやサンゴ、イソギンチャクを含む刺胞動物と、有櫛動物(クシクラゲ)をまとめたグループ。クシクラゲを除けば、腔腸動物=刺胞動物=クラゲ・サンゴ・イソギンチャクと考えてよい。

海綿動物: 最も原始的な多細胞動物。襟鞭毛虫の群体が起源であるとも考えられている。

多細胞でありながら明瞭な器官の分化が見られない。最初は腔腸動物にふくまれていたが、現在はより原始的な海綿動物として別扱いされている。

襟鞭毛虫: 従属栄養(捕食型)の単細胞生物。最も発達した単細胞生物と言われる。しばしば巨大なコロニーを形成し、コロニー内の細胞形態に分化が見られる。


ということで、多細胞動物には最初から神経がある。ないのは単細胞動物から多細胞動物への移行期だけだ。

つまり、神経は動物の本質(のひとつ)なのだ。

そして神経とは電気刺激、シナプス結合、受け手細胞の活動電位発現の3つの過程の連鎖なのだ。故に、うつ病はシナプス病として解消はできない。もしシナプス病であるとすれば、それはきわめて限られた領域の、きわめて特殊な形態のシナプス病でしかない。


神経系の変貌


次の「神経系の変貌」という段落には、注目すべき記述がある。(それにしても雑然として読みにくい文章だ)

神経細胞をもたない単細胞動物においてもすでに、神経細胞と同様の機能が見られる。
ゾウリムシは物体に衝突して方向変換する。捕食者に襲われれば遊泳速度を速めて逃避する。
これらの行動は、細胞内の生体電位を利用して引き起こされる。
すなわち機械刺激に対する脱分極、体内のCaイオンによる繊毛打の制御などが起きる。
これは神経系の神経細胞・感覚器・効果器と同じ仕組みだ。

ここでは機械刺激とのみ書かれているが、化学刺激に反応してもおかしくはないだろう。


つまり単細胞生物は、それ自体がシナプス後細胞としての条件を備えているわけだ。であれば「なんでもござれ」で多種多様な刺激に反応して活動電位を発生してもなんの不思議もない。

前の記事でも書いたように、神経伝達の本質的能力はシナプス後細胞にあるのであり、前細胞はそれをくすぐるだけなのだ。だから神経伝達物質がなんであっても、相手が悶えてくれさえすればいいのだ。

その点から考えると、シナプスの機能不全を神経伝達物質の枯渇というところから説明するのは的はずれな気もする。むしろレセプターの側の感度低下なり、細胞内カルシウム代謝の異常なりを攻めていくべきではないかとも思う。

日銀ではないが、量的緩和策には自ずから限界があるのである。求められるは後細胞の内需拡大である。