前期 うつ病に関連する記載は「メランコリー」と名付けられ、ヒポクラテスの時代からある。それは中世の医学にも受け継がれている。メランコリー=黒色胆汁病という病名はうつ病が「症状精神病」だという考えにつながる。

1899年 クレペリン、躁うつ病を提唱。クレペリンはうつ病が精神病だという点ではメランコリーを引き継いだが、内因性(遺伝性)を強調することによりメランコリーとは別の疾患単位に置き換えた。

1956年 イミプラミンがうつ状態の改善に有効であることが発見される。

抗結核薬であるイプロニアジド、統合失調症薬として開発中であったイミプラミンが、クラインやクーンにより抗うつ作用も有することが発見された。その後イプロニアジドからモノアミン酸化酵素 (MAO) 阻害作用、イミプラミンにモノアミン類であるノルアドレナリン・セロトニンの再取り込み阻害作用が発見された。(ウィキ)

1958 抗うつ作用を発見したローランド・クーンは、イミプラミンが有効なうつ状態は「内因性うつ病」であると提唱(操作的診断)。

1960頃 テレンバッハ、ヒポクラテス以来のメランコリー概念を復活しメランコリー親和型性格を提唱。几帳面、良心的、配慮できるといった特徴を持つうつ病の病前性格であり、自分の所属する「社会や集団での役割」に応えようとする中で、不調が生じうつ病を発症する。

1980年 DSM-III、「うつ病性障害」を、症状の重い「大うつ病」 と、軽いうつ状態が長期間にわたって続く「気分変調症)」にわける。「内因性」のカテゴリーを削除。これに代えて、うつ病のサブタイプとして「メランコリー型」を加える。

2004年 樽味伸が「ディスチミア親和型」を提唱。自己愛が先鋭化し回避的な傾向が目立つとされる。

2010年 米国のアキスカルら精神医学者13名が、DSM-5に異論。大うつ病性障害からメランコリーを切り離し、1つの臨床単位として独立させるよう提言。メランコリーとは、食欲と体重が減少し、SSRI系抗うつ薬よりも三環系抗うつ薬によく反応し、内因性うつ病とか典型的なうつ病と呼ばれてきた疾患群。


とここまで書いてきたが、やればやるほど虚しい。イミプラミン(三環系抗うつ剤)の発見以降、うつ病の研究に関する本質的な進歩は何もない。

それなのにうつ病の患者は爆発的に増え、「社会病」の様相を呈している。心気症からグータラ病まで今では立派な「うつ病」だ。

周辺的な研究がどんどん進み(それ自体は悪いことではないが)、疾患概念が曖昧なままに「海馬が萎縮しているじゃん、これぞうつ病の本態だ」みたいな報告が拡散していく。

いまや事態は「ゴミ屋敷状態」だ。

おかげで医者は食うに困らない。薬屋の詐欺の片割れみたいで気分はよろしくないが、「むにゃむにゃ」と言いながらSSRIとツムラの漢方薬を出しておけば日銭は入ってくる