結局、ストレス性疾患、うつ病、双極性疾患(躁うつ病)の三者の疾病概念があいまいなまま話を進めていくと、バベルの塔状況に陥ることがわかった。

これらが違う病気なのか、親戚筋なのか、同じ病気の表現系の違いなのかをはっきりさせなければならない。

それには病理(画像をふくめた)学的検討を先行させるべきであろう。

そんな観点から、すこし研究の歴史を振り返ってみたいと思う。


第1期 モ ノアミン欠乏を主因と考えた時代

三環系抗うつ薬がうつ病に有効なことが発見された。

三環系抗うつ薬の有効性は、神経終末へのモノアミン再取り込み阻害作用によることがわかった。

神経終末でのモノアミンのあり方を検討する中で、うつ病はモ ノアミン欠乏という生化学的異常がもたらすことが明らかになった。

第2期 海馬萎縮を本態と考える時代

MRI の発達によってうつ病患者の画像解析が可能となった。

その結果、海馬の萎縮がうつ病に共通する特徴であることがわかった。また前頭前野など多彩な病変が併存することも明らかになった。

第3期 セロトニン欠乏が関与していると考える時代

モノアミンだけでなく、セロトニンの欠乏も関与していることが明らかになった。

神経細胞における病変の首座も、前シナプスから後シナプスへと広がり、受容体や細胞内情報伝達機能が解明されてきた。

また海馬の萎縮に関してはコルチゾールが関与していることが示された。

ということで、相次ぐ新事実の発見によって問題は解明されるどころか、むしろ混迷を深めているとさえ言える。

参考までに、1975年時点でのうつ病の疾病概念を紹介する。

うつ病概念

少し古いが、2005年の日本医学会シンポジウムにおける山脇成人さんの発表「うつ病の脳科学的研究:最近の話題」から転載させていただいた。

モノアミンに局限されているが、全体の骨格は正しいと思う。

基本的には遺伝性(内因性)疾患であり、病変の首座は間脳にあるということだ。

個人的な意見を付け加えるなら、間脳(視床+視床下部)は脳の駆動力であり、海馬をふくむ辺縁葉は、大脳辺縁系ではなく「間脳辺縁系」として位置づけられる。