前の記事のポイントは2つだ。

一つは、いかなる新技術をもってしても石炭火発のクリーン度は低い、ということだ。

もう一つは、石炭火発の導入はひたすら電力業界の利益のためであり、日本の利益のためではないということだ。

ただいずれも、前回記事だけでは証明は不充分である。

とくに、ホンネは電力業界のためであるにせよ、それでは国際的に通用するものではない。公にはどういう理屈で石炭火発を合理化しているのかがはっきりしない。

フクシマを経験した国が「原発も推進します、石炭火発も推進します」というのでは、物笑いの種にしかならない。

もう少し他の記事を探すことにする。

JB Press というサイトの「 国際的批判を受ける日本の石炭火力 」という記事。副題は「石炭火力に強まる逆風、しわ寄せを受けるバイオマス発電」となっている。

著者は宇佐美典也さんという人。「パリ協定」成立直前の2015年11月の記事である。

1.石炭火発の新技術

たしかにエネルギー源として利用可能な石炭は、一つの魅力ではある。技術開発で無公害ないし低公害の利用法ができれば、産炭地である北海道の再生の可能性も出てくる。

石炭火発の新技術には大きく言って2つの方式がある。一つは「超々臨界圧方式」と、何やらすごい新技術のようだ。

もう一つが複合発電方式であ。石炭をガス化して、それを石炭燃焼によるエネルギーと混ぜて使うという、何やらインチキ臭い方式だ。

ところが、残念ながらこれらの技術は名前の割にはとんと大したことがないようだ。

 

発電効率(%)

CO2排出量(g/kWh)

現在の石炭火発

40

820

超々臨界圧方式

46

710

複合発電方式

50

650

現在のLNG火発

52

340

というのがあらあらの数字で、いずれにしても現在のところは使いようがない。

2.東日本大震災と発電コスト

発電コストにはランニングコストと環境コストがある。

東日本大震災のあと原発が停止し火力発電がフル稼働した。それは緊急避難的な色合いを持ち、その中に石炭火発もふくまれていた。

火発が全面稼働した結果、CO2排出量は大きく増加しランニングコストも大幅に上昇した。東日本大震災以降、20%以上も電気料金が上昇した。

その中で、発電コストを抑えるために、火発の中でも経済効率の良い石炭火力の新設・稼働という考えが浮上した。人の道から言えば邪道だが、経済学的には一つのオプションである。

ただしそれはあくまでも緊急避難であり、その先にどう石炭火発を削減していくかという展望が必ず語られなければならないであろう。

「CO2地下貯留技術と石炭火力発電を組み合わせる」という手段が語られているようであるが、これは本末転倒というほかない。第一それ自体がコストとなる。まずは削減ありきなのである。

3.小規模石炭火力発電という裏事情

この記事で初めて知ったのだが、電力10社の石炭火発への傾斜には、後発電力会社による小規模石炭火発の増設計画があるようだ。

電力自由化に伴い、電力10社は後発電力との競争を強いられることになった。後発会社が市場に参入しようとすれば、価格面での魅力が必要である。

そこでこれらの会社はコストの安い小規模石炭火発に目をつけた。そこには法の抜け穴があったのである。

これまで石炭火力発電に関しては「エネルギー使用の合理化に関する法律(省エネ法)」による規制・指導が行われてきた。これは大手電気事業者の持つ大型の石炭火力発電のみを対象とするもので年間600万kWh 以下の発電設備についての規制はなかった。

そもそも法律そのものが「省エネ法」であって「CO2 排出規制法」ではないから、基本的にはザルだ。

そこを狙って小規模石炭火力発電の新増設計画が相次いだ。

環境省にせっつかれた経産省は規制の内容を厳格化しようとしている。まさに泥縄だ。

4.「超々臨界圧方式」の意味

経産省は一方で電力10社からも突き上げられる。そこで考えたのが規制の網を小規模石炭火発にも広げること、一つは規制基準を底上げすることである。

とくに後者が問題となる。経産省の目論見は電力10社の保護にあるのであり、石炭火発の削減にあるのではない。

そこで持ち込まれたのが「超々臨界圧方式」である。前の表をもう一度ご覧いただきたい。従来型石炭火発の発電効率が40%、「超々臨界圧方式」が46%だ。

そこで経産省は規制値を41%に設定したわけだ。これで後発電力会社の進出は抑えられる。それと同時に電力8社の石炭火発への道が開かれ、「低コスト・高排出量」型発電へのゴーサインが出ることになる。まさに「超々グッドアイデア」である。

「超々臨界圧方式」はCO2 排出量をたかだか100グラム削減するための技術ではなく、後発電力追い落としのための技術なのだ。

5.「バイオマス混焼」という裏技

だが、これでは新規参入組は枕を並べて討ち死にだ。流石にそれでは「電力自由化」の顔が立たない。

そこでさらに悪知恵の働く者がいて、「バイオマス混焼」という方式を考えだした。これは木材ペレットと石炭を一緒に炊くというものらしい。

木材は成長過程で光合成によりCO2を吸収している。だからCO2排出量は差し引きゼロだという理屈である。これを「カーボンオフセット」というのだそうだ。

例えば木材と石炭を同じ発熱量になるように混ぜれば、その火発のCO2排出量は半分になるという計算だ。

ただこの珍妙な方式は、さらに問題を複雑化するおそれがある。

そもそもがバイオマスをいちじくの葉っぱとする発想が歪んでいる。もし電力10社にもバイオマス混焼が許されるのなら、それは後発会社のメリットにはならない。結局、「超々臨界圧方式」など導入せずにバイオマス混焼で行くほうが安上がりだ。

第二に、バイオマスは質量ともに不安定な資源で、安定した供給が難しい。場合によっては資源価格が暴騰する恐れもある。そうなれば後発会社の死期を早めるだけの結果に終わるかもしれない。

第三に、主としてエコの観点からバイオマス専焼設備を運用する再エネ業者は息の根を止められるだろう。これでは本末転倒である。

というのが主な内容で、かなり話題が広範に扱われ、石炭火発問題の実態が見えてきたような気がする。

さらにもう少し学習を積み重ねたい。