鈴木頌の発言 国際政治・歴史・思想・医療・音楽

中身が雑多なので、右側の「カテゴリー」から入ることをお勧めします。 http://www10.plala.or.jp/shosuzki/ 「ラテンアメリカの政治」がH.Pで、「評論」が倉庫です。「なんでも年表」に過去の全年表の一覧を載せました。

「STAP細胞の発見」に舞い上がったものの一人として、一応自分なりにもけりをつけるべきだと思い、「研究論文の疑義に関する調査委員会」の最終報告書を読んだ。

要約を紹介する。

結論は、STAP細胞は捏造であり、小保方氏は悪意を以って誤った情報を流したということになる。あり得べき最悪の結論である。

公式報告書という性格上、かなり抑えられた書き方ではあるが、小保方氏は明確に断罪され、笹井氏は監督責任以上の関与も示唆されている。

今後は理研全体のあり方が追及されると同時に、小保方氏個人の捏造に至る心的機転の問題も問われていくことになろう。

「DNAの脱メチル化」などとはしゃいだ私のけじめはどうしたら良いのか、前向きに思案中である。


平成 26 年 3 月 31 日

研究論文の疑義に関する調査報告書

研究論文の疑義に関する調査委員会

1 経緯

 平成 26 年 2 月 13 日、監査・コンプライアンス室長は、「科学研究上の不正行為の防止等に関する規程」に基づき、当該相談を通報に準じ予備調査を実施した。

予備調査の結果の報告を受け、平成 26 年 2 月 17 日、本調査委員会が本調査を行うこととなった。

2 調査の内容

2-1 調査目的

以下の論文に関して「研究不正」が認められるかどうか調査した。

(1)Obokata et al., Nature 505:641-647(2014) 論文

(2)Obokata et al., Nature 505:676-680(2014) 論文

指摘された問題点は以下のごとくである。

(1-1)Figure 1f の d2 及び d3 : 矢印で示された色付きの細胞部分が不自然に見える点

(1-2)Figure 1i: 電気泳動像においてレーン 3 が挿入されているように見える点

(1-3)Methods の核型解析に関する記載部分: 他の論文からの盗用であるとの疑い

(1-4)Methods の核型解析の記述: 実際の実験手順と異なっている

(1-5)Figure 2d, 2e: 画像が小保方氏の学位論文に掲載された画像と酷似する

(2-1)Figure 1b(右端パネル)の胎盤の蛍光画像と Fig. 2g(下パネル): 両者が極めて類似している

2-3 調査方法

平成 26 年 2 月 20 日から同年 3 月 31 日までの間、関係資料の収集・精査及び関係者のヒアリングを行った。

資料は、論文に掲載された実験のオリジナルデータ・ラボノート、論文作成過程を示すファイル、調査対象者らから提出された書面、調査対象者の間の電子メール、実験に使用された機器類等に関するものである。

委員会は、これらの資料・ヒアリング結果を基に審議をした。

2-4 調査結果及び評価(見解)

(1-1)矢印で示された色付きの細胞部分が不自然に見える点

調査結果

 論文に掲載された画像は、提出されたライブイメージング画像の1コマと考えてよい。

評価(見解)

動画からこの図を作成する過程には、改ざんの範疇にある不正行為はなかったと判断される。

(1-2)電気泳動像においてレーン 3 が挿入されているように見える

調査結果

図は 2 つの電気泳動ゲルを撮影した2枚の写真に由来する加工画像であることを確認した。

画像加工時には、標準 DNA サイズマーカーではなく、隣接するレーン 4 のそれらに合わせて図の挿入が行われた。

ゲル 2 のレーン 1 の写真が単純に挿入されたものではなく、縦方向に約 1.6 倍に引き伸ばす加工をし、コントラストの調整も行われていた。

評価(見解)

論文に掲載された画像が、2枚の別々に電気泳動されたゲルの写真から作成された合成画像であることは、画像の詳細な解析から間違いない。

科学的な考察と手順を踏まないで、2枚の異なるゲルのデータをあたかも1枚のゲルで流したかのように錯覚させている。これはデータの誤った解釈を誘導する危険性を生じさせる行為である。

よって、改ざんに当たる研究不正と判断した。この改ざんは容易に見抜くことができるものではなく、小保方氏の単独責任である。三氏については、研究不正はなかったと判断される。

(1-3)、(1-4)について

(1-5)Figure 2d, 2e: 画像が小保方氏の学位論文に掲載された画像と酷似する

調査結果

2 月 20 日に笹井氏と小保方氏より、STAP 細胞(脾臓の造血系細胞から作製したとされる)からの分化細胞とされる画像に関して申し出があり、これに関する資料の提出を受けた。

申し出の内容は、この画像が実際には骨髄の造血系細胞から作製した STAP 細胞の画像だったということだった。またテラトーマの免疫染色データ画像の一部も脾臓由来ではなかった。

小保方氏から、画像の取り違えをしてしまったとの説明を受けた。

その後、この画像は、小保方氏の学位論文に掲載された画像と酷似することが判明した。これについて小保方氏の事前の言及はなかった。事後に、学位論文のデータは、学術雑誌への投稿論文に転用しても問題ないと理解していたとの説明を受けた。このため小保方氏は転用について言及する必要はないと考えていた。

しかし、学位論文では骨髄由来細胞を、機械的ストレスをかける(細いピペットを通過させる)ことにより得られた球状細胞塊形成細胞が用いられているが、論文では生後1週齢のマウス脾臓由来細胞を酸処理することにより得られた細胞(わゆるSTAP細胞)が用いられている。従って実験条件が異なる。

小保方氏は、単純に間違えて使用してしまったと説明したが、そのことは2つの細胞の条件の違いを十分に認識していなかったことを示唆する。

委員会では、実験ノートの記述や電子記録等から、上記各画像データの由来の追跡を試みた。しかし3年間の実験ノートとしては2冊しか存在しておらず、その詳細とは言いがたい記述や実験条件とリンクし難い電子記録等から、これらの画像データの由来を科学的に追跡することは不可能であった。

評価(見解)

データの管理が極めてずさんに行われていたことがうかがえる。由来の不確実なデータを、科学的な検証と追跡ができないまま投稿論文に使用した可能性もある。

酸処理という極めて汎用性の高い方法を開発したという主張がこの論文1の中核的なメッセージであり、図の作成にあたり、この実験条件の違いを小保方氏が認識していなかったとは考えがたい。

小保方氏によってなされた行為はデータの信頼性を根本から壊すものであり、その危険性を認識しながらなされたものであると言わざるを得ない。よって、捏造に当たる研究不正と判断した。

両氏は、捏造に関与したものではないが、データの正当性等について注意を払わなかったという過失によりこのような捏造を許すこととなった。両氏の置かれた立場からすれば、研究不正という事態を招いたことの責任は重大であると考える。

なお、画像の取り違えに関する笹井氏の当初の説明には、不十分なものがあった。このような行為は委員会の調査に支障をきたす恐れがあり、真摯な対応が求められる。

(2-1)論文2:Figure 1bの胎盤の蛍光画像と Figure 2gの胎盤の蛍光画像が極めて類似している

調査結果

 この2つの画像は、いずれも若山氏 STAP 細胞から作製したキメラマウス胎児のひとつを、異なる角度から同氏が撮影したものである。

小保方氏は2つの画像を若山氏から受取り、笹井氏と共に論文用の図を作成した。下の画像は STAP 細胞と FI-SC との比較のためのコントロールとして使用した。その後、笹井氏の執筆の過程で構想が変わり、この画像は不要になった。しかし、そのことに気付かず、削除することを失念した。笹井氏は、校正の過程でも看過したと追加説明した。

評価(見解)

悪意があったことを直接示す資料等は存在していない。規程に定める改ざんの範疇にはあるが、その行為について悪意があったと認定することはできず、研究不正であるとは認められない。

3 まとめ

2つの点について小保方氏に研究不正行為があったという結論に達した。

小保方氏は、科学的に許容しがたいプロセスによる2枚の異なるゲルのデータの切り貼りや条件が異なる実験データの使用など、到底容認できない行為を重ねて行っている。これは研究者としての未熟さだけに帰することのできるものではない。

一方、実験ノートの記述があまりにも不足しているなど、第三者が小保方氏の実験内容を正確に追跡し理解することが困難な状況が明らかとなり、この点も健全な情報交換を阻害していると判断される。

このような行為やずさんなデータ管理の背景には、研究者倫理とともに科学に対する誠実さ・謙虚さの欠如が存在すると判断せざるを得ない。

小保方氏以外の調査対象者について、研究不正は認められなかったが、データの正当性と正確性等について自ら確認することなく論文投稿に至っており、研究不正という結果を招いた。その立場や経験などからしても、その責任は重大である。


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