何故か、突然、「今日は映画に行こう」と心に決めた。

日曜の朝には、いろいろお勤めがある。まずはシャワーを浴びて、洗濯を始める。トーストとハムエッグを作って、コーヒーを沸かして魔法瓶に入れる。

関口宏のモーニングショーを見ながら、「ファイターズが日本一!」の新聞を読む。「信じられないくらい、皆よくやった。しかしシーズンを通してみれば、最大のヒーローは栗山だな」

と独り言を言いつつ、「そうだ、今日は映画日和だ」と思いついたのである。とにかくひたすら寒い。風は冷たい。カーディガンにジャケットではいけない。コートが必要だ。しかしマフラーと手袋はまだ早い。

映画館を出た時、風花のような雪がちらほら、地面をプラタナスの枯れ葉がカサカサという景色が、最初からイメージとして固まる。

ネットで調べたら、それなりに食指の動く映画がたくさんある。その中で「エル・クラン」というのが目に止まった。アルゼンチンの映画で、一家で誘拐ビジネスに当たったという連中の実話に基づくクライム・ストーリーだ。

「これはマストだ」と、瞬間確信した。

映画館は前から3列目、スクリーンに向かってやや右よりというのが生理的にあっている。一般の好みからするとかなり前だが、画面が大きくないと何故か損した気分になる。

映画館は昔と違ってそう大きくはないから後ろでも良いのだが、それなら家で大型液晶で見たほうが良い。いまの映画はそもそもDVDをプロジェクターで写しているだけだ。

映画館の良いところは非日常にある。「大衆の中の孤独」感を満喫しつつ、いつの間にか映画に没入するところにある。家で同じものを見ていたら気が疲れてしまって途中で抜け出したくなる。そのくらい映画は臭いを発する。その臭いに慣れて鼻がバカになってしまうところから映画の醍醐味は始まる。逆にそれが嫌で、映画館から足が遠のいてしまうところもあるのだが…

「エル・クラン」という映画は面白かったかといわれると、さほど面白くはなかった。衝撃的だったかといわれると、さほどでもなかった。

実話を題材にしているが、それをストーリーにまで消化しきれていない。普遍的なものにまで昇華されていないから、衝撃的な事実が乱雑に投げ出されるだけだ。

配給会社のホームページにはいろいろな人の感想が載せられている。「普通の家族にしか見えない人々が冷酷な犯罪を実行していくその落差と、平然としたヌケヌケぶりに恐怖感を覚える」というのだが、私はそれは違うと思う。

彼らの感想を読んでいると、何故かメキシコの麻薬カルテルの大量殺人を「恐ろしいことだ」と騒ぎ立てる人を白々しく思ってしまったときと同じような感慨が湧いてくるのだ。

(以下、私のこの映画に対する感想を書いたのだが、読み返すと、まったく乱雑だ。次の記事でもう少し分かるように述べることにする)