鬱陶しい作業だが、誰もやってくれないからやるしかない。

さもないと、動物園の動物みたいに、「ゾウはどこに住んでいます、キリンはどこに住んでいます」という事実の列記に過ぎなくなってしまう。

ミトコンドリアDNAのハプロタイプは大きく言ってL系、M系、N系、R系がある。

L系はアフリカにしかいない。Yで言えばA、Bに相当する。

L系からM系とN系が分岐するが、アジアへの渡来はM系が先行するようである。そもそもM系はアジアにしか存在しない。

ということで、まずは大胆な仮定から。M系はY染色体のB、Cに照応する。N系はO系その他に相当すると考える。

もちろん本当はY染色体のC系とD系に照応する、M系の亜型までわかればなお良いのだが、ミトコンドリアDNAの研究はそこまでは行っていないようだ。

もう一つの仮定としては、先住者のいる地域に後発者が入って主流となる場合、男性は後発者が多くでも、女性は先発者の割合が高いだろうということ。逆に先発者のいない無住の地に入ったグループはY染色体とミトコンドリアDNAの一致率が高くなるだろうということだ。

これはスペインが征服した新大陸で確認済みの事実だ。

それで調べてみると、

本土日本人では

M系統が約60% N系統が約15% R系統が約25%となった。

これがアイヌ人では

M系統が70% N系統が25% R系統が5%となった。

沖縄では

M系統が70% N系統が15% R系統が15%となっている。

これで分かるのはM系統がY染色体のD2に照応するのだろうということである。そして後発者を受け入れた側の人々だろうということである。

驚くべきことに山東・遼寧地方、韓国でもM系統(とくにD亜型)が6割を占めていて他者を圧倒していることである。

こうなるとM系統=D2とは言えない。C、D全体をふくめている可能性もある。

分からないのは

①アイヌ人のY亜型がなんだろうということ、北海道にはオホーツク系のC3人しか入っていないから、Y亜型はC3人の女性なのか。だとすれば、なぜY亜型はN系統にふくまれなくてはならないのか。

②本土ではN系統があまりに少ない。O人はN系統に属さないのか。

③C1人が最初の定住者とすれば、C1の女性はかなり高い比率でいるはずだ。それはどこにふくまれるのか。ひょっとするとD4の主体を形成しているのかも。

④さまざまな亜型についてはそのとおりだろうが、M系統とN系統に分ける系統樹は果たして正しいのだろうか。

ということで、とにかくミトコンドリアDNAは解釈が難しく、恣意的になるおそれがある。素人はあまり近づかないほうが身のためだ。