「辺縁葉」概念の復元と発生学的理解

ふと気がついた。ウィキペディアにはそもそもこの用語がない。世界は大事なものを見落としているかもしれない。

世界大百科事典には以下の記載がある。

1878年P.ブローカが,室間孔の周囲を環状にとりまいている脳の中心部分に対して “le grand lobe limbique” という名称を与えた。

その後、比較解剖学的研究を基にして辺縁葉“limbic lobe”と名づけられた。

脳の系統発生的に古い皮質部分で,おおよそ広義の嗅脳に相当する。本来,嗅覚(きゆうかく)との関連において発達をとげたとされる。

現在,辺縁葉については納得させうる定義づけができていない。嗅脳との区別も明らかではない。


文章はそのまま使っているが、順序はだいぶ入れ替えた。元の文章は一番最後のセンテンスを強調するための表現になっているからだ。

辺縁葉は元々は嗅脳であったようだ。それは前脳から前上方にせり出し左右一対となった。そこには第三脳室が管となって入り込み、辺縁葉の中軸を形成した。

やがて辺縁葉の外側に大脳がどんどん発達するようになり、これに応じて第三脳室から伸びた髄液管は延長に延長を重ね、ついには側脳室となった。

だから、第三脳室が左右の辺縁葉にT字型に分岐する分岐点(モンロー・ポイント)は大脳の始発駅となった。

市街地が形成されるとそこに鉄道が走るようになるのと同じ理屈だろう。

線路沿いは古い町並みで、始発駅から離れると新市街が広がっていくように、原始皮質、旧(古)皮質、中間皮質、新皮質 と同心円上に広がっていく。

それが固有名詞で言えば海馬・歯状回、嗅脳、鈎・海馬傍回、扁桃体、帯状回という順序になる。さらにその先に独立した島皮質がある。

その際、海馬が嗅脳より発生学的には古い組織だということ、つまり前脳に近い組織だということは念頭に置いていくべきであろう。

Slide Share より(「辺縁葉」を明確に図示したものは日本語サイトにはなかった。まことに変な話である)

limbic lobe

まず、「辺縁葉」というものが実在すると仮定する。そこから論理を組み立てると、上記の表現になる。

すると大事なことに気がつく。辺縁葉は最初の大脳皮質なのだ。だから、大脳皮質とはそもそも何なのか、大脳皮質がなぜ誕生したのか、大脳皮質がなぜ発達したのか、など大脳皮質の発生に関わるすべての謎を解く鍵がそこにふくまれているわけだ。

そして私の三脳原基説も実証されることになる。

もしそう言うエンタイティが成立するなら、「海馬や」さんは木を見て森を見ていないことになるかもしれない。


2016年09月02日  の続きです。