ピケティの名をアメリカで有名にしたのはこのグラフらしい。

アメリカ合衆国における所得上位1%の所得が国民総所得に占める比率の推移を示すグラフである。

ウィキペディアによると、このグラフは「2011年のウォール街を占拠せよ運動に、大きな影響を与えた」そうだ。

Top1percentUSA

ウィキペディアの記述を見ると、なかなか面白い着想がある。

1.不公平拡大過程の分析

アメリカでは上図のようだが、フランスでは60年代に一度拡大したあと80年にかけて下がり、その後は比較的低い水準で推移している。

したがって、資本主義一般の傾向ではなく、国家の再分配政策がかなり左右する政策課題であることが分かる。

しかしより長期的にはグローバリゼーションの規定を受けるだろう。とすれば、短期と中長期に分けて不公平拡大の規定要因を探ることが必要になる。(短期と言っても戦後70年をそれ以前の1世紀と比較するというスパンだが)

2.クズネッツ理論への批判

クズネッツは、不平等の拡大は、長期的には逆U字の曲線を成すもので、生産性の低い部門から高い部門へと労働力が移動することによって、産業革命の開始とともに拡大が進み、やがて縮小していくと主張した。

理論としてはきわめて飲み込みやすい仮説であり、長期の理論としての有効性は否定されてはいないと(私は)思う。

ただクズネッツの前提とした戦後の復興期は特殊な時期であり、全面的に受け入れられるものではない。という、ピケティの批判ももっともだ。

ようするにケインジアンが描いたバラ色の世界はなかったということだ。

ピケティは、より短期の要因である所得の再分配システムが圧倒的な規定要因であることを主張する。

3.租税の基本構造の解析

ピケティは不公平拡大の短期的要因として税制をあげる。

なかでも強調されるのが資産および資産から生じる所得である。第二次大戦後に先進諸国で共通して格差が縮小したのは、①戦争により資産が喪失したからであり、②その後の高度累進課税により資産蓄積が難しくなったためとする。

ただし、①はアメリカには当てはまらないという弱点を抱えている。事実、上の図でも、大恐慌後の落ち込み、大戦中の耐乏生活をエピソード的にはさみつつも、全体としてはなだらかに70年代にいたるまで下降し続けている。

アメリカの強収奪・強蓄積は明らかにレーガノミクスの導入を通じて開始され、その後の歴代政権により加速されている。

4.直接税民主主義と資産課税

ピケティはこの資産に対する課税を何とかせにゃアカンと言っている。それはまさにそのとおりで、別に「21世紀の資本論」を引き合いに出すほどのものではない。

ただ、資産課税はある意味で直接税民主主義の根幹を侵すものであり、(法人税もふくめ)話はそう簡単ではない。

我々は所得税原理主義者であるべきだ。資産への関与は、基本的には行政的・誘導的手段を用いるべきだ。(農業問題・中小企業問題を考える際にはこの視点は不可欠だ)

私が思うには、問題は、資産から発生する所得の捕捉の困難さにある。だから各国税務当局が苦労しているのだ。

5.もっとダイナミックな格差指標を

ウィキペディアではおおよそ以上のように説明されている。

感想的に言うなら、ピケティの問題意識に賛成である。

ピケティが問題にしているのは貧困ではなく、格差である。格差が問題なのは、不正義であるからだ。それに対し貧困が問題なのは、可哀相だからだ。かたやユニバーサルであり、かたや個別的であり、倫理基準が異なっている。

両者の関係はよりダイナミックに捉えなければならない。このことはジニ係数を巡る議論のなかで痛感される。

「ジニ係数無用論」との議論は非常に疲れる。もっと根本的なところで、時代のトレンドを踏まえた、「過程としての貧困、過程としての格差」の指標を見出す必要があるだろう。


ウィキペディアさん、わかりやすくまとめてくれてありがとう。

でも「21世紀のマルクス」(英エコノミスト)じゃないな。