前の前の記事で、初歩的な疑問として3つあげた。
狩野さんの主張(実験データではなく)は、その疑問を強めさせる。

オギャーと生まれて1週間から2週間の間というのは、ほとんどプログラム行動であろうと思う。
「強者が唯一生き残る」というのも、所詮はそのDNAプログラムの一部にすぎない。
胎生期にし残した仕事というのはたくさんあるはずだ。いくら母体の血流を通じて豊富な酸素を取り入れることができると行っても、自力で呼吸してありったけの酸素を使いながらする作業ははるかに濃厚だ。
出生後の数週間というのは、その時までやらなかった、あるいは宿題にしていた作業を一気にやり遂げるチャンスだ。
「個体発生が系統発生を繰り返す」とすれば、狩野さんの言うようなパフォーマンスは進化の何処かの段階でリアルに存在していたかもしれない。しかしいまやそれは粛々と進行していくほかないのである。

鉄は熱いうちに打たなくてはいけない。初期の段階に方向付けしなくてはいけない。「刈り込み」は神経線維を一定の方向に向かわせるための通過儀礼でなくてはならないのだと思う。

私は大脳(小脳もふくめ)という組織が前脳・中脳・後脳からなる基幹脳(脳幹)に発生した腫瘍のようなものではないかと考える。その原基は嗅脳(触覚脳を含めた)である。
その組織はきわめてモノトーナスであり、どこからどこまでがどういう働きなのかは、見た目からは判断つかない。最初から合目的的に形成されたのではなく、後から任務分担されたのだと考えるべきだ。

主要だから、とにかく無目的的に増殖しようとする。とくに生後数週間は大量の酸素を得てとにかく必死に接続を増やそうとする。大脳を構成する神経細胞にとってはとにかく接続こそ命だからだ。
それをどう抑制していくかがプログラムされた遺伝情報の力の見せ所だ。
それによって、無限増殖を繰り返そうとする脳ミソは「大脳」になっていくのだ。
ちょっとでもプログラムを実行ミスすれば、へんちくりんな脳が出来上がることになる。

プログラムされた腫瘍は腫瘍ではなく臓器である。しかし一歩間違えば文字通りの腫瘍になってしまう。それが生まれて好気性の生命となるに及んで、わずか数週間の間に勝負しなければならないという点では本当に大変なことであろう。心から同情する。