中国軍事戦略の趨勢と海軍

石油公社問題はいよいよ本丸、周永康に迫ってきた感があるが、これだけの騒動の渦中に南シナ海での石油掘削を強行したことは、南シナ海問題がどうも石油公社だけの話では無いようだと感じさせる。

そこでもう一方の旗頭である海軍の事情についても知って置かなければならないと考えた。しかし軍事問題は非常に専門用語が多くなかなか理解できない。

ここでは阿部純一さんという人の書いた上記のレポート(2011年)を抄読する。

1.毛沢東の軍事戦略

2.鄧小平の軍事戦略と海軍

3.江沢民の軍事戦略とハイテク化

4.胡錦濤の軍事戦略と情報化

アメリカの中東での戦闘では、衛星やインターネット、無人偵察機等、情報通信分野における技術革新が戦争の遂行形態を革命的に進化させた。中国にとってはそのキャッチアップが課題となった。

「国防整備と経済建設の調和のとれた発展」よりも踏み込み、まさに「富国強兵」に舵を切った。

5.海軍近代化の意図するもの

大陸国家である中国は、伝統的に沿海防御中心の考え方を採ってきた。

宿願である台湾との統一をめざし、「独立」を阻止するため、台湾海峡を中心とした海域における制海権、制空権の確保も人民解放軍に課せられた。

第一列島線は、(中国が主張する)排他的経済水域をカバーするものであり、絶対的な制海権を確保する対象である。

第二列島線は、中国の対米「接近阻止」戦略である。

6.南シナ海の「聖域」化がもたらす摩擦

中国が南シナ海を「核心的利益」とすることは、戦略的には異なった見方ができる。中国は南シナ海をミサイル原潜のための「聖域」にしたいのである。

これまで地上発射の戦略核ミサイルにのみ依存してきた核抑止力に、新たな核抑止力としてミサイル原潜を展開しようとしている。

しかし、この海域は日本や韓国にとっても重要な海上輸送ルートに当たり、中国がこの海域で海軍力を強めようとすれば、国際的な摩擦を生じることは避けられない。


ということで、中国海軍の狙いがおぼろげながら浮かび上がって来る。

中国は当然アメリカを仮想敵国として戦略を組み立てている。そこで一方では「太平洋を分割しましょう。そこまでは自由にやってください。そこからはこちらも反応しますから」という線を提案することになる。これが第二列島線だ。

とは言うものの、具体的な抑止力がなければ相手はそんな提案には目もくれない。そこでミサイル原潜による抑止網が必須のアイテムとなる。

ところが中国の沖合には広大な大陸棚が横たわっていて、原潜の活動にはきわめて不向きだ。おまけに東シナ海には沖縄列島があって、米軍の強大な基地もある。

となれば、南シナ海を舞台とし、バシー海峡を太平洋への出口として確保するしかない。これによって初めて第二列島線が実効性を持つことになるわけだ。

むしろ南シナ海の石油資源を巡る争いは、中国海軍にとって奇貨であり、利用しない手はない。

というのが海軍の本音だとすれば、ことはそう容易に形のつく問題ではなさそうだ。

フィリピンへの米軍基地再建も、むしろ海軍増強のチャンスなのかもしれない。ただしこの賭けは凶と出る可能性も十分ある。

根本的には第二列島線(対米防衛線)の考えを破棄することが一番なのだろうが、それはかなり長期的なものになりそうだ。

とすれば、これを自国の権益線と混同しないことがもっとも求められるのではないだろうか。