ラテンアメリカ人民の闘い ハイライト編

前の記事 2016年07月21日

は、とりあえず記事をざっとめくったが、少しトピックスを絞って深読み。

ブラジル

これまでのザットしたあらすじ

ブラジルが60年代から70年代にかけて軍部独裁下にあったことは、ご承知と思う。

軍事独裁からの民主化を勝ち取る中で労働組合が先進的な役割を果たした。労働者は民主化の後に労働党という政党を結成した。

それが資本家の政党との長い間の角逐を続けた後に、2003年に大統領選挙に勝利した。これがルーラ政権であった。

これは民主勢力にとって大きな前進ではあったが、完全な勝利とは程遠いものだった。アメリカは資本回収の脅しをかけてルーラにIMF路線の踏襲を押し付けた。

当初ルーラ政権にとってできることは限られていた。アメリカの縛りだけではなく、議会においても少数与党としてさまざまな妨害を受けた。

ただその後の世界的な好況の中で、財政にも一定の余裕が生まれ、それを貧困層に振り向けることによって国内需要が生まれ、景気の好循環を実現した。

経済面では南米諸国間との交易を重視し、メルコスールという経済共同体を形成した。その中でブラジルは分別ある兄貴分として振る舞い、南米共同体構想の実現に向けて大きな役割を果たした。

国際的にも「ブラジルの奇跡」は大きな反響を呼び、その中でワールドカップやオリンピックの招聘に成功するなど華々しいパフォーマンスを実現した。

しかし国内においてはその後も少数与党の壁を破ることはできず、資本家政党との連合を余儀なくされてきた。

それらの溜まっていたツケがリーマン・ショックと中国経済の沈滞により、一気に吹き出した。

昨年のGDPはマイナス3.5%に達した。生産、労働、福祉の各方面で矛盾が噴出した。メディアはそれをルセウの失政として攻撃し、大規模な資本家ストを展開した。

しかし民主勢力が「軍事独裁に戻すな、民主主義を守れ」と立ち上がった。ルセウは辛くも大統領選に勝利し二期目の大統領に就任した。

ここまでが今年初めまでの状況である。


ペトロブラスをめぐるスキャンダル

従来ブラジルは石油の取れない輸入国であった。しかし相次いで海底油田が発掘され、現在はほぼ自給状態となっている。

石油事業を一手に引き受けるペトロブラスは国営会社であるが、現在は政府の意向と独立した独自の戦略のもとに運営されている。

急成長を遂げた会社だけに原油安の影響は甚大で、経済の低迷と相まって巨額の赤字を出すに至っている。

贈収賄の生まれるための条件が全て揃っていると言っても良いだろう。

このスキャンダルは単発ではない。与党の絡んだものもあるし、各州政府のたかりもある。

これはこれで解決しなければならない問題だが、それがルセウのところに向かうのは筋違いである。


ルセウの職務停止まで

野党と資本家たちはこれをルセウ弾劾と政府転覆に結びつけようと一気に力を発揮した。

それが3月のサンパウロでの数百万のデモである。有産者を中心に組織されたデモは、タイの軍事クーデター前のデモやベネズエラの野党デモと共通する。

これで政界に脅しをかけた。これで労働党と連立を組むブラジル民主労働党(PMDB)がビビってしまった。そして党がまるごと反大統領に寝返って弾劾裁判の開始に賛成してしまったのである。

5月にはルセウ大統領の職務が停止された。国会における採決はわずか1票差であった。そして副大統領のテメルが職務を代行することとなった。テメルはPMDBの議員であり、裏切りの中心にいた人物である。


ルセウは戦い続ける

ルセウ弾劾の容疑は「予算支出について粉飾があった」と言うものである。ルセウも労働党もこれを認めていない。

上院の調査委員会は「粉飾決算」にルセフが関与した証拠はない、との結論に達した。

本来、大統領弾劾審議は、大統領が直接関与した例外的に重大な過失がある場合に限って認められており、粉飾決算などを弾劾審議開始の理由にするのは違憲である。

「彼女は現在までのところ、一般犯罪との関連で、一つの責任も問われてはいない」(エクアドルのコレア大統領)のである。

ルセウは職務停止を「議会におるクーデター」と呼んでいる。連立与党であったPMDBが財界側に寝返り、ルセウを追い落としたとされる。最近わかったのは、ペトロブラス汚職に絡んだPMDB幹部が自らの訴追を避けるために芝居を打ったということだ。

議会採決の直前、PMDB党首がペトロブラス重役と会い、「捜査を止める唯一の方法は、大統領をルセフからテメルに替えることだ。国軍高官らもルセウ打倒を了解している」と発言。このテープが新聞にすっぱ抜かれている。

首謀者のクーニャ下院議長は、その後汚職によりその座を追われた。共謀者とされるテメル副大統領にも収賄疑惑が浮上している。

ルセウの与党は少数与党であるから、国会が支持しなければ政局運営がにっちもさっちも行かなくなる。

しかしルセウは国会議員に選ばれたのではない。全国民の投票で選出され国民の信託を受けたのであるから、三権分立の建前からすれば職務停止は越権行為である。

「新政権」は選挙の洗礼を受けないまま、社会保障の削減と労働者の権利剥奪に動き始めている。労働組合は全国行動などにより反撃を強めている。ブラジル共産党のフェガリは、「このゲームを変える民衆の能力をみくびっている」と語る。