やや古いが、昨年10月の世銀報告ではラテンアメリカ経済の全体傾向が示されている。

これによれば

商品相場の上昇と対中国貿易の伸びを基礎に順調な成長を遂げていたラテンアメリカ経済は、08年のリーマン・ショック、その後の中国経済の原則、原油価格など一次産品の暴落を背景に厳しい局面を迎えている。

一次産品輸出への依存度により各国の影響は様々であるが、全般的にゼロ成長ないしマイナス成長で推移することは間違いない。そして途上国には内需拡大により景気浮揚を図るという選択肢はない。

問題は各国の左翼政権がこの経済調整局面を乗りきれるかどうかである。

左翼的であろうと右翼的だろうと、ポピュリスムが今のラテンアメリカで成り立つ基盤はない。今バラマキをすればハイパーインフレになる。それは「失われた10年」で確かめ済みだ。

あるとすれば“民主的な引き締め”か、ネオリベ的な資産移動しかない。

引き締めにあたって保護すべきものが2つある。一つは生産組織だ。大企業と資本家を保護するのは悔しいが、これが潰れては元も子もない。

もう一つは貧困にあえぐ低所得者層だ。子供、老人、女性の生きる権利は最低限保障しなければならない。そうでなければ国家というものの存在意義が失われる。

そうすれば当然中間層、とくに官公庁に働く労働者にしわ寄せが行くしかない。しかしこの人達こそが左翼運動を支え文化を築き民主主義を守り育ててきた人たちである。

まずはこの人達が退路を断たなくてはならない。そのことによって富裕層を倫理的影響下に置き、貧困者の信頼を引き寄せることができるのである。

これができなければたちまちにして弱肉強食のジャングルが出現する。このことは「失われた10年」と「絶望の10年」を経て、ラテンアメリカ人民の体得した痛切な教訓である。

ベネズエラやエクアドル、ボリビアについてはいろいろな見方があるようだが、一番見なければならないのは10数年の闘いを経て、こういう層がどれだけ分厚く積み上げられてきたかである。