エフィナコナゾールは何故滲み込みやすいのか

日薬理誌の145号(2015)に巽さん(科研製薬株式会社 新薬創生センター 薬理部)という人の書いた総説がある。その下の本文PDF [944K] というところにリンクすると文章が読める。

その説明に従ってチェックしていこう。

要約: これまでのトリアゾール系薬剤より強いらしい。しかしそんなことはどうでもよい。

「爪の主成分であるケラチンに対する親和性が既存治療薬よりも低いため、一つ目を良好に透過し、ケラチン存在下でも高い抗真菌活性を保持した」

ここが一番の環だ。

これは以下の形で確認されている。

①インビトロで、有効濃度の薬剤が爪下層および爪床に到達することが示された。

②第Ⅰ相臨床試験で、高い爪中濃度と爪貯留性が確認された。

③第Ⅲ相臨床試験で、17.8%の完全治癒率が得られた。日本人患者では28.8%に達した。これは対照薬と有意差があった。

1.はじめに

これまで欧米ではシクロプロクスやアモロルフィンのネイル・ラッカーが10年以上にわたり用いられてきたが、臨床効果は低く、日本では承認されてこなかった。

外用薬が効かない理由は次のように考えられている。

①白癬菌は爪甲下の爪床に存在するが、薬剤は厚い爪甲を透過できない。

②薬剤は爪の主成分であるケラチンに強く吸着する性質を持っている。このため薬剤は爪表層に滞留してしまう。

そこで科研製薬では、ケラチン親和性が低い抗白癬薬の検索を行った。その結果、エフィナコナゾールを発見した。

この薬は既存の薬と同じトリアゾール系であるが、構造的にはメチレンピペリジン基を持っていることが特徴である。

2.薬理学的特性

In vitro での高真菌活性は高く、スペクトラムも広かったと書かれているが、“そこそこ”と判断しておく。

ケラチン親和性に関する実験

一般に抗真菌薬の多くはケラチンに吸着することで活性が低下する。薬物が効果を発揮するためには遊離型の形で存在する必要がある。

①In vitro の実験でケラチンからの遊離率を測定し、他剤と比較した。既存薬が0.5~1.9% であったのに対し、エフィナコナゾールは14.3%が遊離したままであった。

kyuutyaku

②また5回の洗浄操作による累積遊離率は、他剤が1.7~6.9%であったのに対し46%で有意差を認めた。ケラチンでなくヒト爪を用いた実験でも同様の結果を得た。

yuuri

③ケラチン添加によるMICの変化を調べたところ、他剤は低下したが、エフィナコナゾールはほとんど影響を受けなかった。

ついで欧米で使用されているラッカー剤との比較検討を行っている。

①ヒト爪を用いて累積透過量と透過速度を測定した。エフィナコナゾールはシクロピロクスと同程度で、アモロルフィンより優れていた。爪透過が定常状態に達するまでの時間はエフィナコナゾールがもっとも優れていた。

rakka-

②透過した薬剤の爪甲下(現地)での発育阻止作用を測定した。ラッカー剤では発育阻止作用は認められず、エフィナコナゾールのみが発育阻止作用を示した。

③モルモット実験でも1日1回4週間の爪塗布で生菌数を減少させた。これはラッカー剤に比べ有意であった。

このあと臨床試験の成績も提示されているが、透過性が一番の問題なので、詳細は省略する。

結論として、イトラコナゾール経口剤とほぼ同等の臨床効果を示すとされる。もしそうであれば、経口剤の出番はほぼなくなるものと予想されるが…


見出しを見てここに来た人には申し訳ないが、

結局、何故滲み込みやすいのか、なぜケラチンとの親和性が低いのか、という問題は分からなかった。

「いろいろ掘っていたら、タマタマ当たった」というだけみたいだ。

「滲みるんだからしょうがないじゃん」ということである。多分、これからその機序を巡りいろいろ検討が行われ、同じ発想で新薬が開発されていくだろう。

おそらく メチレンピペリジン基 というのが鍵を握っているのだろうが、これに関しては特許権はないだろう科研製薬はメチレンピペリジン基を発見しただけで、構造に組み込む技術を発明したわけではない。だからエフィナコナゾールの優位はつかの間に終わるかもしれない。

クレナフィンは何故滲み込みやすいのか

水虫の薬はどのようにして効くのか
爪白癬の付け薬 ほんとうに効くのか

旭川皮フ形成外科クリニック の水野寿子先生の記事はもっとわかりやすいです。ご参照ください。