ラフマニノフのピアノ曲を流して聞いてみた。
ラフマニノフの後半はまことにつまらないのだが、一体なぜなのかを知ろうと思ったわけだ。
感じたのは作品23の「10の前奏曲」の7番までは、良い悪いは別にして感じは出ているのだが、8番から後にはまったく歌がないということだ。
とにかくストライクが入らないのだ。いかにも置きに来るストライクはあるのだが、まるっきりの棒球だ。
ふつう前奏曲といえば24曲と相場は決まっている。しかしこの人は10曲で一旦やめちまって、残りは仕切り直ししている。おそらく仕切り直しせざるを得なかったのだろう。これが1901年のことだ。
それで9年もしてから残り13曲を発表している。どれもこれもさっぱりだ。9年間にぼちぼち書き溜めたのだろうが、インスピレーションは完全に枯渇している。ラフマニノフという人は頑張り屋で、そうなっても一生懸命曲を吐き出すだが、ほとんど黒色胆汁だ。
同じ年に「音の絵」と題して8曲、6年後に同じ「音の絵」作品39という名前で9曲をまとめているが、これも随所にかすかな残り香を感じさせるものの、かえって哀れを感じていしまうという具合。派手な和音ばかりが耳につく。
ロシアの演奏家は偉大な作曲家に敬意を払ってこれらの曲もせっせと弾いているが、こちらは義理もないので、以後は願い下げにしたい。
作曲家にはこういう人がいるようで、リャプノフも超絶技巧練習曲とソナタを書いた後、突然止まってしまう。そこへ行くと我がリャードフはぐーたらを続けていたせいか、50歳過ぎても才能は落ちない。むしろ冴えてくる。
すごいのはチャイコフスキーで、若い時からすごくて年取ってもまったく落ちない。もう少し長生きして欲しかった。
参考までに私のラフマニノフ・ベスト
rachmaninov
演奏家については別にこだわっているわけではない。たまたまあった音源という程度。