おぞましいことこの上なき存在であるにもかかわらず、原爆というのは過去と未来とをつなぐ重要な結節点である。

いま世界ではキリストの生誕日を歴史の結節点としているが、人類の平和的共存という流れで見るのなら、1945年こそが結節点となるべきかも知れない。

平和は血だらけの姿で、「ヒバクシャ」という衣をまとって登場した。

そこから、平和を至上の価値としてとらえる「人類のひとつの時代」が始まった。だから我々はあらゆる逆流に抗して、平和の歩みを進めなければならないのである。

さまざまな議論はあるにしても、まずはそのことを踏まえた上で展開されなければならないと思う。

だからこれまでの人道とか、正義というレベルの議論は物足りなさを感じるのである。

次の評論

オバマ大統領「広島演説」は一大叙事詩だった

という東洋経済(05月30日)の記事。執筆者は岡本 純子という方で、肩書は「コミュニケーションストラテジスト」ということで、コミュニケーションを啓発する仕事らしい。

この記事もオバマ演説をコミュニケーション・テクニック的な見方で切り取っているので、微妙にテーマはずれているが、オバマ演説の本質的な部分をかなりしっかりと捕まえていると思う。

演説の紹介を以下のごとく結ぶ。

広島を「核戦争の夜明けではなく、私たちの道義的な目覚めの地としなければならない」とスピーチを結んだ。

ただし原文はもう少しニュアンスに富んだものだ。

広島と長崎が「核戦争時代の夜明け」として歴史に刻まれる未来なんか要らない。「モラルの目覚めの朝」として歴史に刻まれる未来をともに選んでいきたいと、そう切に願う。(satomi さんの名訳

記事はその後、この演説のライターと目される38歳のベン・ローズ大統領副補佐官(国家安全保障問題担当)の紹介に移っていくが、省略する。