という前の記事の題名は思いつきでつけたんだけど、

どうやらとりあえず、FATCA・CRS以外の道はなさそうだ、というのが現在の感想。


そもそも税というのはなんだろうか、というところから出発しないとならんなぁと、そういう感じです。

というのを作成していて、今回のFATCA年表と、特に後半部分は完全にかぶっています。

つまり、トービン税・金融取引税は失敗して、FATCA・CRSが成功したのです。

なぜかということです。

すごく悲観的に言えば、アメリカがその気になれば話は進むし、アメリカがその気にならなければドンキホーテだということでしょうか。

現象的にはわかりやすい解釈ですが、もっと基本的な問題もあるのではないかと思います。

それは、売上に対して税金を取るのか、利益に対して税金を取るのか、それとも所得に対して税金を取るのかという選択です。

こうやって3つ並べてしまえば、それだけで結論ははっきりしています。所得に対して徴収するべきなのです。

税金というのはそもそも所得の再分配であり、自由競争とか市場経済とは別の論理だからです。これが近代税制の基本理念です。

「消費税」と我々が呼んでいるものは実は売上税です。売上税というのは古代の慣習です。ショバ代みたいなものです。これと対応するのが「関税」で、これは関所代です。これに人頭税が揃えば、三役揃い踏みです。

いずれにしてもヤクザのやり方であり、独裁政治の産物です。たしかに捕捉は簡単ですが、抜け道はたくさんあります。したがって政治的民主主義とはなじまないものです。

以前、シャウプ税制を勉強していて感銘をうけたのですが、近代民主社会においては、税金というのは民主主義を支える拠金だという考えです。

したがって、税金は社会の構成員のポケットマネーから形成されなければならないのです。

その辺りを書いたのが、2012年06月11日の記事  です。

この観点からすれば、ヨーロッパで展開されたトービン税・金融取引税は問題があり、FATCAのほうが合理性があります。

合理性の観点からだけではなく、捕捉可能性の観点から見ても、発生源方式は限界があります。なんとかサンドウィッチという租税回避スキームあたりになると、売上でやっていく徴税はほとんど不可能だろうと思います。

すべてのビジネスが終わって秘密金庫に資金が入る瞬間を狙い撃ちする他ないと思います。虫を殺そうとすれば空中を飛び回っている時ではなく蛹になって羽化を待っている時こそが狙いめです。

問題は、富が金になってどこかの金庫にしまわれた時、その金はほとんどがアメリカ人(正確に言えば米国の大企業と富裕層)の金だということです。

だからこの金をいくら摘発し徴税したとしても、それはアメリカ政府の国庫に入ってしまうことになります。ある意味ではアメリカの思う壺です。

だからこうやって挑発した税金を各国間でどのように分配するのかが次の困難な課題になるでしょう。そのときに発生源の問題も出てくることになると思います。

アメリカはFATCAの言い出しっぺでありながら、CRSには加入しようとしません。そこにはこういう問題があるのです。

いずれにしても、世界は租税回避という自滅的な道から一歩抜けだそうとしています。ここが大事なことです。

2016年04月25日