パナマ文書問題で一番衝撃的だったのは、実は菅官房長官の「調査する意思はない」発言ではなかったろうか。
世界中の政府が真剣に考え、調査に着手するとの発言を繰り返す中で、菅官房長官の発言は国際的に見ても、いかにも奇異で唐突だった。
しかしそこをつく報道はほぼ皆無である。ネット世界の口さがない連中が罵詈雑言を浴びせてはいるが、すべて感情的なものでしかない。
しかしこれは、日本政府の首尾一貫した態度であり、それはOECDとG20の合意とはまったく逆の方向であることを見なくてはならない。
これを理解するにはFATCAと、各国の対応スキームであるIGAを知らなくてはならない。
話は長くなるので省略するが、結論としては、日本は預金者(大口の)保護を最大の眼目においており、そのためには租税回避の黙認をも厭わない態度を貫いている。情けないほどに、骨の髄から階級的だ。
「世界で最も金持ちに優しい国」が彼らのスローガンである。そしてそのために「個人情報保護法」が最大限に利用されているのである。
アメリカとの二国間交渉で、日本はFATCAに関するアメリカの要求を丸呑みにした。「アメリカ人の情報はそっくりそのまま提供します。しかし日本人のアメリカ資産については公表しないでください。なぜなら、そんなことは知りたくないからです」
これが日米共同声明(2012年)の精神だ。これが受け入れられると、日本銀行協会は随喜の涙を流して感激した。そして「日本政府よ、よくやった!」と褒め称えた。
私から言わせれば、「日本政府よ、なんてことをしてくれたんだ!」である。
超富裕層の蓄財は税金逃れによって加速されている。ここを突っ込まなければ税収は出てこない。超富裕層の手先になって資産隠しと税金逃れに血道をあげる国、それが日本だ。
個人情報法保護法についてはいろいろ考えもお有りでしょうが、超富裕層の財産隠しの隠れ蓑になっては行けない。泥棒の金の隠し場所は摘発こそすれ、保護されてはならないのだ。このことだけははっきりさせて置かなければならないだろう。