「パナマ文書」、何が重要か?

ニューディールをやっているうちに、「パナマ文書」に関わる材料を消してしまったようだ。

この種のネタはスピードが命だ。ニュース記事は日にちが経つとどんどん消えていく。とくに日本の新聞はスピードが早い。まだ間に合うか?

ウィキリークスに始まって、タックスヘイブンのリーク情報はこれまでも繰り返し報道されてきた。有名人や政治家の名がチラチラと浮かんでは消えていく。たしかに情報量としては膨大だが、どこがこれまでのリーク情報より重要なのかがよく分からない。

少なくとも日本での報道では、まったく差が見えて来ない。率直に言って、日本の新聞は、この手の情報では、あまり役に立たないことが多い。

幸いなことに、最近では海外紙の日本語サイトがかなり充実していて、そこである程度の感触はつかめる。日本の有力紙と違って、情報の出し惜しみはしない。



WSJ

4月6日 「パナマ文書」とは何か

パナマは長年、オフショア会社の設立場所となってきた。以前のスイスの銀行による脱税幇助も、パナマ企業を使うスキームが多く用いられてきた。

パナマを代表する法律事務所モサック・フォンセカは、富裕な依頼人がペーパーカンパニーを設立する手助けをしていた。パナマはいまだに銀行をめぐる機密のとりでである。

その「モサック・フォンセカ」の内部資料が流出した。それは最初、南ドイツ新聞に流出した。

南ドイツ新聞は国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)に協力を仰ぎ、文書の解析に取り組んだ。

ICIJはこれを分析して、4月3日、一連の記事を発表した。

今回のリークを受けて(日本を除く)各国政府が調査に乗り出している。G20会議でも注目が集まる公算が大きい。


4月7日 「パナマ文書」が示す資金隠しビジネスの衰退

2月初め、スイスの検察は、マレーシアの複数の国有企業から40億ドルもの資金が不正流用された可能性があると発表した。

かつてスイス当局は、「スーツケースの中の現金が正当な手段で得られたものか、それとも不当なものかを判断するのは難しい」と考えていた。

スイスの司法長官がこの件を公表したこと自体が時代の流れを表している。

世界の規制当局は、オフショア租税回避地や資金洗浄を厳しく取り締まるようになった。

モサック・フォンセカのようなオフショア会社の利用は急激に減っている。米政府が巨額の罰金を科すようになったからだ。また内国歳入庁(IRS)の調査も厳しくなり、資産を隠すのは一層困難になっている。

モサック・フォンセカは無記名株式を利用することで儲けていた。この制度のもとでは、株券の所有者が企業の保有者となり、企業は登録名義人なしで存在することが可能になる。

人々はプライバシーのためや課税を逃れるため、不正利得を隠すためにこの業務を利用してきた。

米同時多発テロが起きた後、米国政府はテロ組織への資金供与を絶つための取り組みを強めた。一連の内部告発を受けて租税回避の取り締まりが強化された。これに(日本を除く)各国も追随した。

OECDによると、金融取引に関する情報交換や共通の報告基準の採用に今や96カ国が合意している。

モサック・フォンセカは、2005年には1万3287ものオフショア会社の設立をサポートし、企業6000社近くの代理人を務めた。これまで設立したオフショア企業は約24万に達する。

しかし15年には新規設立数が3分の1以下の4341社にまで減少し、代理する企業数は170社にまで減少した。


4月7日 租税回避の取り締まり、もぐらたたきの様相

課税逃れとマネーロンダリング(資金洗浄)を取り締まるための国際的な取り組みが強まっている。

(日本を除く)先進諸国政府は、2008年の金融危機と世界同時不況を受け、課税逃れの取り締まりを強化した。

2010年、米政府は外国口座税務コンプライアンス法(FATCA)を成立させた。

これは「外国の金融機関に米国人顧客の身元とその保有資産に関する報告を義務付ける」というかなり乱暴な法律だ。これでスイスの各銀行がビビった。

EU もこれに追随し、スイスやルクセンブルクなどに圧力をかけた。その結果、EU市民が保有する口座の情報を共有できるようになった。

ここ数年で、HSBCホールディングス傘下のスイスのプライベートバンクによる課税逃れ、ルクセンブルク政府による多国籍企業の節税対策支援がリークされた。

その結果、利用者は伝統的なタックスヘイブン(租税回避地)から、より「エキゾチックな場所」に向かっている。それがパナマであり、バヌアツである。

OECD加盟国ではないパナマは、何とかして秘密性の高い管轄地域にとどまることを決意している。例えば、銀行口座情報を各国当局がやりとりすることや、税務問題での相互協力などを拒否することである。

(したがって今回のパナマ文書の暴露は、パナマ当局への脅しという側面を持っている)


ル・モンド=朝日

ウォール・ストリート・ジャーナルのあまりにも楽観的な見通しには、ピケティが異議を唱えている。

各国間で金融資産情報を自動的に交換することは悪いことではない。

しかしそれが始まるのは2018年からのことだ。財団などの保有株には適用されないし、違反へのペナルティーも一切設定されていない。

貿易制裁と金融制裁を科すことなしに、「お行儀よくしてください」と頼むだけのことだ。

そして真の問題は、経済危機に対して中央銀行が十分な貨幣を発行することで乗り切ったという経過から、そしてその後も金融緩和を続けているという経過から、世界が完全な金余り状況に陥っているということだ。

公的セクターと民間とが持っている金融資産は全体で、GDPのおよそ10倍に達している。

そして、とりわけ民間部門のバランスシートが膨張し続けており、システム全体が極めて脆弱なものになっているということだ。


以下はAFPから

4月8日AFP 米国の著名人なぜ少ない?

さすがはAFP(L'Agence France-Presse)、この疑問に切り込んでいる。ただ「米情報機関関与説」までは踏み込めていない。

要旨を紹介しておく。

理由の第一は、資産隠しやオフショア取引をしたい米国民にとって、スペイン語圏のパナマはタックスヘイブンとして魅力的ではないからだ。

米国人は、資産隠しや匿名で会社のために外国に行く必要はない。いくつかの州では、数百ドルでペーパーカンパニーを設立できる。

第二に、アメリカ政府の取り締まり強化だ。例えばクレディ・スイスは、米市民の資産隠しに協力したために26億ドルの罰金を科された。これは企業の生死に関わる。

このため、タックスヘイブンは米国人顧客を非常に恐れている。

と書いたうえで、「これは噂だが」として、ロシアなど他国の不安定化を狙うCIAによるもの、とするリーク陰謀説を紹介している。

4月7日AFP 「パナマ文書」が暴いた租税回避の中心はロンドン

「パナマ文書」問題で、ロンドンが世界中のオフショア・ネットワークを結びつける「心臓」の役割を果たしていたことが明らかになった。

ロンドンの金融街シティーの英法律事務所、英会計事務所、英金融機関がモサック・フォンセカのような会社を操作している。

英国は海外領内にあるモサック・フォンセカの仲介企業数で世界第3位を占め、3万2682人の顧問を有する。

カリブ海の英領バージン諸島には、モサック・フォンセカの顧客企業が11万社も存在していた。

モサック・フォンセカは、世界各地のタックスヘイブンに設立された数千の企業をつうじて、英国と何らかのつながりを持っていた。

その多くが英国内、特にロンドン市内の不動産に投資されていた。

4月7日AFP 流出元の法律事務所、最大市場は中国

内部文書流出元のモサック・フォンセカの活動の3分の1近くが、中国本土と香港に置かれている同事務所の支所で行われていた。

現在活動中のペーパーカンパニー1万6300社以上が、同事務所の香港と中国本土の支所を通じて設立されていた。

中国共産党の最高指導部に当たる政治局常務委員会のうち、現職または元委員少なくとも8人の親族が、オフショア企業の利用に関与していた。

複数のメディアの報じたもの。

アジアの大国中国が、腐敗と資本逃避問題で大きく揺れている。

フォンセカ中国

                          モサック・フォンセカの上海事務所(AFP)

4月12日AFP 各国のスパイも利用 独紙報道

南ドイツ新聞は、複数の国の情報員がモサック・フォンセカを情報活動の「隠れみの」として利用していたと報じた。

事務所の顧客には、1980年代のイラン・コントラ事件に際して、CIAの「仲介役」として密接に協力していた人物も複数含まれていた。


世界一のタックスヘイブンはアメリカ

パナマ文書の発表前の記事ですが、1月27日のブルームバーグの「世界一のタックスヘイブンはアメリカ」というのが面白い。

ロスチャイルド銀行やトライデント信託は、ネバダ州のリノに信託銀行を開き、バミューダなどのタックスヘブンに隠し持っていた海外顧客の資金を移動させています。

これは、OECDによる新しい情報交換基準に対抗するためと言われます。

なぜリノの信託銀行に資金を移せば安全なのか、それはアメリカがOECDの新しい情報交換基準が適用外となる地域なためです。

ロスチャイルド社の代表は、「顧客の資金をアメリカに移動させれば良い。そうすれば無課税となり、政府からも隠すことができる」と語っている。

現在多くの富裕層がアメリカの口座が最も安全と感じているというわけです。

2,010年にアメリカで、外国金融機関を利用した租税回避行為を防止するため、FATCAが施行されました。

OECDはこれに刺激されて新しい情報交換基準を作り、2014年に97の加盟地域が賛同する形で合意に至りました。

しかしこの基準を受け入ない国が3っつあります。バーレーン・ナウル共和国・バヌアツ共和国、そしてアメリカです。

財務省は「OECDの新基準はFATCAをベースに作られたものであるので同意する必要はない」と述べている。

しかしアメリカの金融アドバイザーは、「アメリカがOECDの新基準に同意しなかったことは、我々のビジネスを強く支持することにつながるのは明らかだ」と語っている。