ビキニ被爆による健康被害の状況をまとめてみた。

最初は年表に書き込んでいたが、あまりにも量が膨大で、年表が読みにくくなってしまった。そこで別文章の形にする。

データのほとんどは山下正寿さんらにより収集されたものであり、詳細については原著を参照していただければ幸甚である。なおデータの多くは80年代半ばのものであり、その後の追跡が期待される。(原水協通信 「ビキニ事件」の内部被ばくと「福島原発被災」のこれから)

1.第五福竜丸

焼津港所属のマグロ漁船。

3月1日午前4時頃 ビキニ東方160キロにおいて操業中に爆発に遭遇。ここはアメリカが設定した危険水域の外であったが、爆発の威力が予想以上に強かったために影響を受ける形となった。

久保山さんの談話: それから3時間すると粉のような灰が船体一面に降りかかった。その晩から調子が悪くなりメシも喰えない状態で、無理に酒を呑んでもまったく酔えなかった。
 2日目あたりから幾分頭の痛い人も出てきた。3日目には灰のかかった皮膚が日焼けしたように黒ずみ、10日くらい経ってから水ぶくれの症状になった。

3月14日に帰港。乗組員全員が「急性放射症」と診断され、都内に搬送されて入院となる。増田三二郎さん(28)と山本忠司さん(28)が東京大学で診察を受けた結果、原子病と確認される。

9月23日に久保山愛吉さんが死亡。日本人医師団は死因を「放射能症」と発表。米政府は「放射線が直接の原因ではない」とし、謝罪せず(現在まで)。

直接死因は急性肝機能障害であった。同様の肝障害は他の乗組員17名にも発生した。その多くは注射や輸血などで医原性にウィルス感染したと考えられる。
乗組員23人の追跡調査では、半数以上が50歳前後で若年死、その多くはガンであった。(正確な数字は確認中)

2004年に放医研の明石らが第五福竜丸被爆者の追跡調査の結果を発表。

12名が死亡。肝癌6名、肝硬変2名、肝線維症1名、大腸癌1名、心不全1名、交通事故1名。肝疾患が多くを占めるのが特徴。生存者の多くも肝機能障害があり、肝炎ウィルス検査では、A, B, C型とも陽性率が異常に高かった。(多くが医原性であることを示唆)

2.第二幸成丸

高知県室戸港船籍のマグロ船で192トン。2月24日に神奈川県浦賀を出航。ビキニ東方1000キロの海域で17日間の操業。この間に3回の核実験があった。

3月27日に第2回目の核実験で被爆。“雪”(死の灰)を浴びる。

4月15日に操業を終え築地に入る。検査で、船体から4000カウント、船員からも数百~千数百カウントが計測された。これは当時の基準上限の2,3倍に当たる。魚はそのまま処分された。

乗組員20人(保険登録者のみ)を追跡すると生存者7人、病死12人(ガン4人、心臓発作4人など)、不明者1人であった。病死者は70代前半2人、後の9人は40~60代であった。

3.第13光栄丸

4月5日、操業を終え、神奈川県三崎港に入る。船員中に白血球減少症患者が3人発生。約50トンのマグロは洋上放棄される。

4.新生丸

19人の乗組員が保険登録されており、死亡者は14人、生存者2人、不明者3人。

宿毛市の漁村から同じ船に乗り継いだ7人をグループとして追跡した。このグループは1957年に第8達美丸に乗船し、クリスマス島の核実験にもう一度遭遇している。7人中、生存者は1人であり、病死6人(ガン4人、心臓発作2人)、50代が3人であった。生存者の1人も心臓近くの血管と胃の手術をしている。

5.第5海福丸

4月7日帰港時に汚染マグロ340本が海洋放棄された。乗組員の判明者18人中9人が病死(ガン5人)し、生存者もリンパ腺ガン、結核、胃潰瘍などで手術をしている。

6.沖縄のマグロ船(2隻、船名不明)

乗組員68人を追跡。うち、17人が40―50代で死亡していた。死因が分かったのは12人。11人がガンだった。(沖縄の高校教師による自主調査)

7.高知県の被爆船員の追跡

1987年時点での数字。

消息が判明した本県の漁船員187人のうち40人が病死。その約2割が40―60代の「若い死」だった。被ばく者がなりやすい癌、心臓まひ、白血病で亡くなった人は24人もいた。(高知新聞)

放医研の明石らの調査でもわかるように、第五福竜丸の船員の死亡には、輸血の影響がかなりあることがわかる。

このバックグラウンドを除くと被爆の影響はかなり抑えられることになる。早死・ガン死の傾向は、おそらくは大半が無治療・無観察であった他の漁船のほうが正確に表れているであろう。

その点では、最後に高知新聞の紹介で載せた数字(約40年後のフォロー)が大まかな傾向となろう。消耗率は40÷180×100=22%である。

87年時点での30歳男性の平均余命(50%死亡)が47歳であるから、この数字は必ずしも高いものではない。その2割が70歳未満の死というのも必ずしも驚くほどのものではない。もう少しハイリスク・グループに絞って検討すべきかもしれない。