ゲノム解析 とりあえずのまとめ

分からないことを調べていくと、さらに分からないことが出てくる。あり地獄にはまり込んだようだ。

とりあえず、おさらばする前に一応まとめておこう。

1.遺伝子というが遺伝学ではない

一番の勘所はここだ。だからわざわざ遺伝子解析と呼ばず、ゲノム解析と言いなおしているのだ。

遺伝子の日常的作業はタンパクを作る上でのイニシエーターとなることだ。そして一生の間に数回だけ、形質を子孫に伝えるための役割を担う。

そして日常作業としてのタンパク合成は、遺伝子だけでなくほかのさまざまな因子との協同によって遂行されている。だから遺伝子だけではなくほかの因子をも含めた総合的な分析が必要なのである。

そのために、46個の染色体に分包されたDNAの鎖の塩基配列をまず明らかにしようというのがゲノム・プロジェクトであった。(そういう意味ではゲノムという言葉を使ったのは間違いで、DNA解析と呼ぶべきであった)

遺伝子の意味、まして遺伝学的な意味はここでは問わない。染色体という存在の意味は問わない。そういう思いをこめてゲノムという言葉を使っているのだ。遺伝学者がゲノムの講義をするときは、必ずこのことを念頭において話してほしい。

2.ゲノム解析の二つの目的

人間のDNAに乗っている遺伝子の数は意外に少ない。植物のDNAよりはるかに少ない。なぜか。

それは塩基配列の中で、遺伝子の分画以外の場所に、重要な情報が隠されているからである。それによって数少ない遺伝子を使い回ししていることになる。(ほかに複数遺伝子の組み合わせによる作用発現、えぴジェネティクスによる二次修飾もあるが、ここでは省略)

そのために、塩基配列の中から遺伝子分画を発見して分析するだけでなく、それ以外の分画の構造も明らかにしなければならない。

これが第一の目的である。

第二の目的は、まだその働きが不明な遺伝子もふくめて、遺伝子がいくつあるかを確定し、そこからその働きを解析していくことである。

今までは何か遺伝子異常による不具合が発生し、その原因を探り、原因となっている遺伝子をその存在も含め探し出すという作業であった。遺伝子の一本釣りである。

ゲノム・プロジェクトはこの発想を逆転させることになる。トロール網で魚を一網打尽にし、その後で識別・分類を行おうというのである。いわば博物学である。

このライブラリーが以下に応用が利くか、それは生物の系統発生学で旧来の常識がまったく通じなくなったことに典型的に示されている。

3.ゲノム解析のための技術開発

この部分はいまだに良く分からない。

まずは2本鎖を1本鎖にして、これを適当な長さに切断する。これを電気泳動にかけて長いものから短いものまで並べる。

その左端にマーカーをつけて、塩基配列を決定していく。塩基配列が決まったら、そのパターンを比較しながら1本のDNAに再構築していく、という作業のようだ。

このために幾多の新技術が開発・応用されている。主なものがヌクレアーゼ、パルス型電気泳動、プライマーやプローブの開発である。

後は大型コンピュータによる膨大な情報の処理である。

4.遺伝子、制御因子の意義

すでに意味論の研究が始まっている。はっきりしてきたのは単一遺伝子による支配というのはむしろ少なく、その多くが複数遺伝子の総合作用により、生物学的特質が発現するということである。

たとえば今話題のIPS細胞も、先祖帰りのために少なくとも4つの遺伝子の作用が必要だ。その作用順序も関係しているようだ。

これらの情報はライブラリーとして保管され、自由に閲覧できるようだ。もっとも私どもが見ても分かるものではないだろうが。