年表で1980年の記載に以下の文章がある。

80年 DNAマーカーを利用した遺伝子マッピング法が開発される。さらに核酸プローブを利用して遺伝子を染色体上に正確に同定することも可能になる。

三つ分からない言葉が出てくる。DNAマーカー、遺伝子マッピング、核酸プローブである。

知識として分からないのももちろんだが、理屈として分からないのが、「遺伝子を染色体上に正確に同定すること」って、それって遺伝子マッピングじゃないの? ということだ。

ということは、「遺伝子マッピング」という言葉の定義が分かれば、全体が大づかみにできるのかな? と思っていろいろ説明を読んでみた。というより読もうとしてみた。

どれもこれも、ひどい悪文で、ますます混迷を深めるばかりだ。

まずは論理として整理してみよう。

マップというのは地図だ。おそらく道路地図みたいなものだろう。平面上に線があって点があって、その線上に遺伝子が乗っかっている地図だ。これでどんな遺伝子がどこにあるのかが分かるし、その順番も分かる。

この地図を作るのがマッピングという作業だろう。したがってそれは測量法と同義になる。三角点と望遠鏡と磁石があればそれは出来上がるはずだ。後は伊能忠敬並みのガッツだ。

とすれば、DNAマーカーが三角点、望遠鏡が核酸プローブではないかとうすうす見当はつく。

たぶんここまでは与野党とも違いはないのだが、ここから先が違う。ショットガン戦略で考えるマッピングは、遺伝や突然変異をこつこつとやっている人(遺伝屋さん)とぜんぜん発想が違うのである。

遺伝屋さんは突然変異を見つけ出して、その責任遺伝子座をトライアンドエラーで探っていくのだが、ゲノム解析のほうは正常と異常とを問わずブルドーザーで根こそぎ解析してしまおうというのだから、そもそも発想が違う。

そういう点では、このページがゲノム・プロジェクトにおけるマッピングの論理をより反映しているのだろうと思う。

ただしちんぷんかんぷんなのはこちらも同じである。


ちんぷんかんぷんなりに、箇条書きにしていく。

1.マッピングの定義

DNA上の特定遺伝子の位置を決定すること。これまでは既知のマーカー遺伝子との連鎖を測定して位置を割り出していた。近年では核酸自体を解析する物理的手法が用いられるようになっている。

2.まずは切断とグループ化が必要

特定遺伝子の正確な位置を知るには、それをはさむ領域のDNAクローンを作成しなければならない。

そのためには実際の塩基配列の長さに基づいた物理地図をつくり、遺伝地図とを対応させることで、存在場所を限定する。

物理地図作りに使われるのがrare-cutter制限酵素(たとえばNotI)で、これでDNAを切断していく。さらにパルスフィールドゲル電気泳動で、DNA断片をその鎖長に応じて分画する。

3.断片の再統合

ゲノムDNAのNotI切断物を、今度はNotIリンキングクローンで断片を検出する。リンキングクローンとは、二つの隣接するDNA断片の境界にまたがるDNA断片のことである。

これによって絵合わせの要領で、制限酵素断片をつなぎ合わせた制限酵素地図が作成できることになる。これが成功したかどうかはFISH(fluorescence in situ hybridization)法を行うことにより確認できる。

たぶん「誤訳」がいっぱいあると思うが、雰囲気はつかめたと思う。