抗認知症薬 開発の歴史

私の十八番で、まず分からないことは歴史的に理解しようということです。


* アルツハイマーで脳内のアセチルコリンの減少が確認される。アセチルコリン・エステラーゼの抑制により、アセチルコリン減少を抑制しひいては認知症の進行を抑制する可能性が示される。

1989年 エーザイ、「ドネペジル塩酸塩」を記憶改善薬として治験開始。

1993年 タクリン(商品名コグニックス)が米国で承認される。肝障害のため使用は広がらなかった。

1997年 スイスのサンド社が「イクセロン」(リバスチグミン)を発売。世界で最も頻用される抗認知症薬となる。ドネペジルと同じく抗コリンエステラーゼ薬であるが、アセチルコリンのみならず、ブチルコリンの分解も抑制する。

当初はドネペジルに比べ副作用が強いといわれたが、「パッチ化」により副作用の軽減に成功したといわれる。

1999年 エーザイ、「ドネペジル塩酸塩」を国内発売。商品名はアリセプト。当初の適応はアルツハイマーのみ。

2000年 彼岸花にふくまれる植物アルカロイドとして古来知られたガランタミン(抗コリンエステラーゼ薬)が、西欧で抗認知症薬として認可され使用開始。商品名は「レミニール」

2000年 この頃からアリセプトの長期投与の成績が報告され始める。

迷惑行動が減少し、意欲低下、無関心、抑うつなどが改善。病理学的にも海馬の萎縮が抑えられたと報告される。
一方、1.アセチルコリン過剰症状: 興奮、イライラ感、精神不安定。2.徐脈性不整脈。3.パーキンソンの像悪、などが報告される。

2002年 メマンチン塩酸塩がヨーロッパで商品生産を開始。商品名は「メマリー」

作用機序は不明だが、広義のカルシウム拮抗剤と説明されている。メマンチンは脳内グルタミン酸活性を抑えることにより膜を安定化させ、カルシウムの細胞内流入を防ぐとされる。独特の鎮静作用があり、コリンエステラーゼ阻害薬とは作用機序が異なるため、併用効果が期待される。

2011年 アリセプトの特許切れ。その後相次いでジェネリック薬品が登場するが、価格はせいぜい半減程度で、薬効(生物学的効果)についても賛否相半ばする。

2011年 リバスチグミン(イクセロン)、ガランタミン(レミニール)、メマンチン(メマリー)が国内販売を開始。抗認知症薬4種類が国内で出揃う。

2014年 アリセプトのレビー小体型認知症への適応が拡大される。

2014年 薬価改定。アリセプト(エーザイ)の薬価が1日あたり(常用量10ミリ)600円を割る。エーザイは剤形の多様化により抗薬価維持を図る。


ということで基本はアリセプト+メマリーの併用、これで多少の過活動化があっても我慢して使えということだ。これにリスパダールとグラマリール(場合によっては三環系抗うつ剤)を組み合わせ、経過によりハルシオンを乗せるというストラテジーになる。

ただしこれらの処方はわれわれ内科医が勝手に積み上げるようなものではなく、精神科あるいは神経内科の先生の力を借りながらやっていくことにになるだろう。

とくに内科医が注意しなければならないのは、抗ヒスタミン剤と抗アレルギー薬の安易な使用であろう。また糖尿病の急速な悪化は何度となく痛い目にあっている。また蓄積作用は1か月を過ぎて因果関係があいまいになった頃から急速に出現することがあり要注意だ。