「異次元緩和」が、連載3回めにしてようやく本題に入った。


黒田総裁の当初の目論見はこういうことであった。

1.日銀券を大量に発行する。

2.この日銀券で、市中の国債を買い取る。

3.保有国債を日銀に売却した市中銀行が、大量の日銀券を運用する。

4.これが生産投資に向けられ、雇用が再生する。


それでどうなったかというと、

1.日銀券は1.4倍になった。日銀の保有する長期国債も1.4倍になった。市中銀行の保有する日銀券も1.4倍になった。

2.市中銀行の企業への貸出残高は1.5%の伸びに留まった。生産投資はされていない。

3.生産投資以外の運用はどうか。市中に出回る日銀券は3%の伸び。つまり、ほとんど運用されていない。

3.増えたのは市中銀行の日銀への当座預金残高で、これが1.97倍。


当座預金は利率ゼロで、まったくのタンス貯金だ。


それで誰が得して誰が損したのか。


1.まず政府は喜ぶ。国債が消化できたからだ。国債は売れるから発行できるのであって、売れなければそもそも発行できない。

問題は国債を現金化できたことで生まれた現金のゆくえだ。これが一つ。


2.銀行も喜ぶ。デッド・ストックになりかけていた国債が額面で売却でき、元利をしっかりとって正真正銘の日銀券になった。これをとりあえず、日銀の当座預金の口座に入れることは当然である。しかし運用先がない。これが2つ目。


3.大企業はあまり関係ない。せいぜいが手持ちの国債を日銀券に変えて、資産力を高めたくらいだ。だから当初は「異次元緩和」には批判的だった。

しかし、「異次元緩和」にともなって生じた円安・株高で大儲けした。だからアベノミクスさまさまだ。

そもそも大企業には銀行から金を借りるいわれなどない。岩田日銀副総裁がいう如く、「企業の現金・預金保有残高はGDPの半分に達している」のだ。


4.中小企業はまったく蚊帳の外だ。大量の金の流れを横から見つめるだけだ。

しかし円安についてはそうは行かない。国内向け企業はモロに荒波を被っている。「円高不況」ではなく、「円安不況」が出現しつつある。

これに追い打ちを掛けるのが、中小企業金融円滑化法の打ち切りであり、消費税増税だ。

こういう構造になっているのが「異次元緩和」後1年目の状況ではないか。


連載も明日が最後か。また竜頭蛇尾に終わるのかな。


一番の問題は、企業の巨大な内部留保だ。これらの企業が国内で生産することをやめて、文字通りの巨大ホールディングスとなっていく先には、どのような貨幣の流れが形成されていくのだろうか、という問題。


第二の問題は銀行の機能喪失だ。これが銀行の死につながるのか、それとも不況期の一時的姿態にすぎないのか。


第三に、中小企業はこのまま死を待つしかないのかという問題だ。自生的な金融・信用の創出への道はないのだろうか。「ハイリスク・ハイリターン」の第二金融市場の形成は不可能なのだろうか。それに対する政府や公的機関の関与はいかなるものであるべきなのだろうか。