インド・トヨタのロックアウト

産経のニュースを見る。経過は以下のようだ。

労働組合との賃金交渉が難航していた。

一部の従業員が監督者を脅迫するなど、生産妨害を行った。

トヨタは16日にロックアウトに踏み切った。

18日には非組合員の契約労働者が一部ラインで生産を再開した。

24日には生産ラインを全面再開した。労組との賃金交渉は継続中である。

「わが方の損害軽微」という大本営発表だが、WSJの報道はだいぶ様相を異にしている。

28日付WSJ

大半のインド人労働者は今週、職場復帰を拒否している。

労組員4200人が依然としてストを実施中で、停職となった労働者30人の復帰を求めている。この会社の従業員数は約6400人である。

トヨタは、どの従業員も良い行動に努めるとの誓約書に署名しなければならないと述べた。

TKMの大半の労組員はこの文書に署名していない。このため、会社側は労組員なしに操業しなければならなくなっている。労組員は従業員全体の約65%を占めている。

インドでは産業労働者と会社側とは不安定な関係にある。スズキの争議ばかりでなく現代自動車や日本のホンダ、インドの自動車大手も被害を受けている。

インド・トヨタでは労働争議以前、1日当たり570台が生産されていたが、現在何台製造しているかは明らかにされていない。

NewSphere というサイトが外信を拾って背景を探っている。

トヨタ、“死者も出る”インド労働紛争を乗り切れるか? 工場一時閉鎖に現地メディア注目

17日、トヨタ自動車のインド法人が組立工場の一時閉鎖を発表した。これら工場はすでに25日間、実質的な操業停止状態にあった。

ヒンドゥー紙によると、会社側は月平均4000ルピー増の組合要求に合意していた。しかしインド経済が減速し、ルピー暴落や販売不振の結果、2工場では生産能力の3分の1ほどしか使われない状態となっていた。この結果、約束が反故にされた。

会社側は、労働当局の勧告に従って3050ルピーを提示したが、組合側は納得しなかった。

エコノミック紙によると、組合側は、「ヒュンダイや他の自動車メーカーより、はるかに少ない支払いしか受けていない」と主張している。会社側は他の自動車メーカーと同等だと主張している。

タイムズ・オブ・インディア紙によると、閉鎖布告(ロックアウト宣言)は「当社では販売の欠如や過剰在庫により、プラント1で19日、プラント2で27日の非生産日数がありました」と書かれている。

となると、ロックアウトが過剰在庫の整理に利用された可能性もある。

WSJによると、トヨタのインド市場売上高は全世界のうち1.6%で、将来の重要市場と考えて基盤を築いてきたが、先行きの困難を示唆しているのかもしれない。

と撤退もほのめかす。

案外、誓約書の強要のウラにはそういう事情もあるのかもしれない。