相対性理論における時間と宇宙の誕生 - 東京大学総合研究博物館

もうやめようかと思っていたら上記の文章が見つかってしまった。佐藤先生の書いた一般向けの啓蒙文書(2006年)だが、題名からして怖気をふるう。

しかし、先ほどのウィキペディア氏にいささかムッと来ていることもあり、勢いで着手する。

 

はじめに

良く語られるように、「相対論」と「量子論」は現代物理学をささえる2本の柱である。

ここでは、宇宙の認識が、アインシュタインの相対論でいかに深まったかを見る。

かつて宇宙論といえば実証性のない数学的理論だけでほとんど哲学と考えられていた。

しかしビッグバン理論は、アインシュタインの相対論にしたがって提唱され、人工衛星からの宇宙の観測によって裏付けられている。

つまり、宇宙の起源は、相対論と量子論によって物理学の言葉で描き出されるようになってきたのである。

 

相対性理論 時間とは、空間とは?

「力学」は物理学のもっとも基本となっている。それは物質が時間的に空間をどのように移動するかを記述する物理法則である。当然時間や空間とは何かということを明確に定義 しておかねばならない。

ニュートンは時間を「外界とは何ら関係することなく一様に流れるもの」と定義し、空間を「外界とは何ら関係することなく、均質であり揺らがないもの」と定義した。すなわち、時間や空間を絶対的なもの(絶対時間、絶対空間)としたのである。

つまり、力学というのは物体と空間と時間が織りなす世界のことなんですね。ところがニュートンは空間と時間を固定したものと前提してしまって議論するから、議論が狭くなってしまう。「空間や時間も物体なんだ、動くんだ」と考えると世界が広がるということなんでしょうかね。

アインシュタインは時間や空間の概念を大きく変えた。特殊及び一般相対性理論(以下、相対論)は、一言でいえば「時空」の物理学である。

アインシュタインは時空は石舞台ではなく、トランポリンのように重みでへこむ舞台であることをしめした。

「空間や時間も物体なんだ」と考えると、物体が時空によって位置づけられるのと同じように、時空も物体によって位置づけられてもおかしくはないかもしれません。ただ「ゴルフボールと地球」くらいの「程度問題」はあるでしょうが。

特殊相対性理論では、等速度運動している座標系(慣性系と呼ぶ)の間の相対性を示した。特殊相対性理論の鍵となったのは「光の速さは、どんな速さで運動している人から測っても同じ速さだ」ということで、「光速度不変の原理」という。これは観測事実である。

「観測事実だ!」と言われればそうなんでしょうけど、どうしてでしょうかねぇ。

これはニュートン力学と矛盾する。電車の中で前方に向かって発射された光の速度は、地面からみると電車の速度だけ加算されているべきであり、光速度不変の原理は成立しない。

アインシュタインは「時間はみんな互いにちがっていい」と主張して、この矛盾を解決した。

10年後の一般相対性理論で、「すべての座標系」を平等にする理論が完成した。

一般相対性理論を構築する上でもっとも障害になったのが「重力」である。アインシュタインは、「重力は物質の質量エネルギーによる時空の歪みによって引き起こされる」と設定することで、この難問を切り抜けた。

物質が時空を押して、その結果、時空の側に応力というか斤力みたいなものが働いたのでしょうか?

一般相対性理論の中核であるアインシュタイン方程式、重力場の方程式

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物質の質量エネルギーによって時空がどのようにゆがむのかを与える方程式である。

左辺は時間や空間の歪みを表す時空の幾何学量である。

右辺は物質のエネルギー運動量(テンソル)である。cは光速度、πは円周率、Gは万有引力定数である。

つまり物質のエネルギーに万有引力定数Gをかけたものが時空の曲がり方を決めるということになる。

曲がった時空の中で物質は運動し、運動した物質がこの方程式にしたがって時空を決める。このように宇宙は物質と時空が一体となって発展・進化して行く。

 

相対論的宇宙論

アインシュタインは、翌1917年に、一般相対論を用いて静的宇宙モデルを作り上げた。

アインシュタインは重力場の方程式を変形し、宇宙定数と呼ばれる定数(Λ項)を導入した。この宇宙定数は空間が互いに退けあうような斥力を及ぼす効果がある。

そろそろ脳みそが豆腐状態になってきた。このへんで一時中断。

…再開

つまり万有引力に対して、新たに宇宙斥力を導入しこの2つをバランスさせようとしたことになる。しかし、このモデルは確かに力が釣り合うが、少しでも揺らぎが加わるとたちまち不安定になる。

その後、A.フリードマンやG.ルメートルが、相対論から素直に(宇宙定数など無視して)計算した。そして宇宙が膨張している可能性を発表した。これはルメートル宇宙モデルと呼ばれ、今日のビッグバンモデルの基礎となった

そしてハッブルより宇宙膨張の観測事実が示された。ハッブルは、より遠方にある銀河ほどより速いスピードで我々の銀河より遠ざかっていることを発見した。アインシュタインは素直に自らの誤りを認め、「人生最大の不覚だった」と語ったという。

 

ビッグバン宇宙モデルとインフレーション

「私たちの住むこの宇宙は、今から137億年の昔、熱い火の玉として生まれた。この火の玉が膨張冷却する中でガスがかたまり銀河が作られ、その中で星が作 られ豊かな構造を持った現在の宇宙が作られた」

これが今日の科学的な宇宙のモデル、ビッグバン宇宙モデルである。

ビッグバン理論は相対論に基づいた理論であり、現在の宇宙の構造・進化を大筋で説明できるモデルである。

しかしこの理論では、宇宙は無限のエネルギー密度をもった数学的特異点から生まれたことになっている。これはペンローズとホーキングの特異点定理と呼ばれる。

しかし時間に果てがあるということは、一般相対論を十分理解している研究者にとって も、あまり気持ちの良いものではない。

これに対し、1980年代になって、「力の統一理論」という素粒子論的宇宙論の研究が進んだ。そして宇宙の創生そのものについても物理学で語ることが可能となった。

 このような研究の中から描き出されてきた宇宙の創生・進化のパラダイムは以下のようなものである。

1) 宇宙は“無”の状態から量子重力的効果によって生まれた。

2) 生まれた直後のミクロな宇宙は、そこに存在する真空のエネルギーの効果によって加速的急激な膨張を始めた。まもなく真空の相転移が起こり、真空のエネルギー は潜熱として開放され、宇宙はマクロな火の玉宇宙になった。

3) インフレーション中に仕込まれた物質密度の揺らぎは、火玉宇宙の膨張と共に次第に成長した。そして現在の宇宙の構造へと成長した。

これが標準的パラダイムとなっているのは、宇宙創生のシナリオとして説得性があり、観測とも基本的によく一致しているからである。

 

素粒子論的宇宙論

宇宙の創生を研究するためには、素粒子の研究が必要である。その理由は、宇宙の創生期に遡るにつれ温度が極めて高くなり、全ての物質は素粒子にまで分解されてしまっているからである。

素粒子は当然量子論的に扱わねばならず、したがって宇宙の初期は量子論的な世界である。

1980年代、物質世界の基本的な力を一つに統一しようとする「統一理論」が大きな進歩を遂げた。その基本的概念から、「力もまた生命の進化と同じように進化した」という示唆が得られた。

「宇宙が始まった時、1つの種類の力しかなかった、しかし宇宙が膨張し冷却する過程で力も枝別れを起こした。その結果、現在の4つの力がうまれた」というシナリオが描きだされたのである。

この辺、前に勉強したはずだけどまったく覚えていません。「勉強したよなぁ」という思い出だけが残っています。

この力の枝別れは、“真空の相転移”によっておこる。

物理学者の描いている真空は決して何にも物が無いカラッポの状態ではない。量子論的に真空を考えるならば、それは必ず揺らいでいなければならない。「揺らぎ」とは、電子とその反物質である陽電子、又陽子と反陽子というように物質粒子とその反物質粒子がペアで生々消滅を繰り返している状態である。

現在の宇宙では真空のエネルギーは存在しないが、相転移前の真空は巨大な“真空”のエネルギ-を持っていた。それは空間に対して“斥力”(アインシュタインの宇宙定数)として働き、宇宙を急激に膨張させる効果を持つ。

宇宙斥力の強さは、アインシュタインの想定したものより何十桁も強力である。だから宇宙はこれまでのビッグバンモデルよりはるかに急激に膨張することになる。

“真空のエネルギー”密度は、宇宙の体積が大きくなっても常に一定である。なぜなら宇宙の全内部エネルギーも急速に増大するからである。

真空のエネルギーはアインシュタイン方程式を通じて急激な宇宙膨張をおこさせるが、その内部にエネルギーを創る(相転移)ことによって、自らの全エネルギーをも増大させているのである。これを「インフレーション宇宙モデル」(指数関数的膨張宇宙モデル)と呼ぶ。

しかしこの膨張は無限に続くわけではない。真空の相転移 の終了と共に、何百桁と増大した真空のエネルギーは「潜熱」として解放され、普通の熱エネルギーとなる。

宇宙は、今度はこの潜熱によって熱い火の玉となって膨張する(ビッグバン)。

 宇宙の創生という見地からみたとき、インフレーションは明かにビッグバン宇宙を作る重要なステップである。このインフレーションという急激な膨張によって、どんな小さな空間も宇宙スケールにすることができる。

同時にインフレー ションによって宇宙の物質エネルギーが何百桁と増加する。 エネルギー保存を満たすアインシュタイン方程式と統一理論の式を基礎とすれば、これらのことが可能なのである。宇宙の膨張は、真空のエネルギーに働く“宇宙斥力”によって引き起こされたのであり、“神の最初の一撃”は必要なくなる。

ところが、アインシュタイン方程式と統一理論の式の合体がうまく行かず、そこに超弦理論が登場するという経過があるらしいのですが、まったく分かりません。


宇宙はたくさんある(多重発生)

インフレーションモデルはまた、宇宙がインフレーションの過程でたくさん生まれることを示唆する。

宇宙でインフレーションが進む時、ある場所では早くある場所では遅くというように非一様に進む。宇宙は凸凹 となる。膨張が早く急激に起こった領域は元の宇宙から因果関係が切れた“子供”宇宙となる。そこから更に“孫”宇宙が作られる。

インフレーションモデルはいうまでもなく、完全な宇宙創生のシナリオではない。このシナリオでは「最初の宇宙」が不可欠である。しかしその様なミニ時空さえあれば、それは量子的には、ビッグバン宇宙に成長させることができるのである。

宇宙では遠くを見ることは過去を観測することである

宇宙では遠くを見ることは過去を観測することである。人類はどのくらい遠くまで見えるようになったのか。宇宙開闢から30万年しかたっていない頃の宇宙の姿まで見えるようになったのである。それが1992年にNASA の打ち上げたCOBE衛星である。(それより前の宇宙は高温のためガスが電離しており不透明担っていて観測できない)

インフレーション理論は、宇宙構造の種が「量子揺らぎ」だと予言しているが、COBE衛星の送った画像には予言通りの密度揺らぎが映っていた。これによりインフレーション理論は観測から強い支持が得られた。

NASAは2003年 2月に後継機のWMAP衛星を打ち上げ、COBEより30倍も精度の高い宇宙初期の地図を発表した。これにより宇宙の年齢は137億年であることが確定された。

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宇宙は“無”から生まれたのか?

ビレンケン(A.Vilenkin)は、宇宙は“無”の状態から生まれるのだと主張し、モデルを提出した。

ビレンケンのいう“無”とは単に物質が存在しないという意味ではなく、その入れ物である時間も空間も存在しない状態である。

このへんの言い方はどうも変で、納得がいかない。中身が無いというのではなく、それを入れる容器としての時空が“無”に近いほど小さいということではないのでしょうか。

この“無”の状態からミニ時空が誕生する。その時空は量子重力効果により極めて小さい。しかし真空のエネルギ-がきわめて高い状態にある。そういう時空が「トンネル効果」により作られる。

トンネル効果とは、物質が波の性質を持っているため、本来通過できない山の内部を通過してしまう量子論的効果である。それはあたかも自分でトンネルを掘るが如きモデルである。

と言われてもさっぱり分からないが、SFで言う「ワープ」のことか?

トンネル効果は、虚数の時間を前提としている。虚数の時間とは空虚な時間ではなく、時間軸が空間軸と区別がつかないものになった位相における時間という意味のようだ。「超時間」といったほうが分かりやすいかもしれない。多分そういうものがあるだろうということは素人にもおぼろげながら想像できる。

量子宇宙は大きさゼロの状態からトンネルをくぐって出てくるまで、虚数の時間で膨張してゆく。そして、トンネルからところで実時間となりインフレーション宇宙へとつながる。

佐藤さんはここを思いっきりスッ飛ばしているが、どうもこのトンネルというのが「インフレーション」理論の味噌のようだ。だからといって、もっと勉強しようとは、とりあえずは思わないが…

ブレーン宇宙論

最近の宇宙のモデルに「ブレーン宇宙モデル」がある。究極の統一理論となりうる超紐理論として考えられているM理論の示唆するところ では、高次元の空間の中に、三次元の膜が存在し、それが我々の住む宇宙である。

というが、ますますなにやらわからないので、今回はパスすることにする。

ダークエネルギー

これも省略

終わりに

宇宙論研究は今二つの方向で進んでいる。

第一は、最近しばしば言われる精密宇宙論である。すなわちインフレーションを含むビッグバン宇宙論を基に、宇宙進化の経過を描き出すことである。宇宙論は、今はっきりと、“論”から天文学となったのである。同時に期待したいことは、従来の理論に矛盾、もしくはそれまでの理論では説明することのできない観測が出てくることである。

第二の方向はダークマター、ダークエネルギーの問題である。ダークマターの候補としては超対称性理論が予言するニュートラリーノをはじめとして各種の素粒子が考えられている。一方ダークエネルギーの存在の“発見”はそれが正しいならば、宇宙論的意義以上に物理学の根幹に ふれる事になる。

科学は矛盾や謎を解くことによって進む。これらの謎は21世紀宇宙論への鍵である。


これは2006年の文章です。おそらく10年近くを経過する中で多くのすごい発見があったことでしょう。もう少し勉強しないとダメですね。