記事(清水記者)を紹介しよう。

この記事を掲載した背景は、4月から法人税率の引き下げが実行されることだ。

形式的には一昨年からすでに実施されているのだが、復興特別法人税と抱き合わせということで実質的には保留されていた。それが消費税増税で歳入が増えるのを機に1年前倒しで復興税を廃止することになったから、今年4月ということになったわけだ。

記事が強調するのは、企業がさらに税率を下げろと騒いでいることだ。「怒れ!」と叫んでいる。

ただ、例によってFacts がてんこ盛りになっていて、読みにくいことこの上ない。

「減税大合唱」の中身

1.政府税調が法人課税検討グループを立ち上げた。「法人実効税率を下げた場合の経済効果や財政への影響を検証する」ことを目的とする。

2.経済財政諮問会議で、経財相名の文書が提出され、「今後の課題として、法人実効税率の調査・分析」を明記した。

3.おなじ経済財政諮問会議で、民間議員が共同で「成長戦略の強化のために法人実効税率を25%に引き下げる」ことをもとめる文書を提出した。

4.経済財政諮問会議で、財務省は法人税引き下げを前提に「他税目での増収策が必須」とし、消費税のさらなる増税を示唆する資料を提出した。

一連の発言のなかでやはり財務省が一番頭にくる。前頭葉が思考停止している。「何考えているんだ。頭のなかはそろばんだけか!」

「引き下げ論」の理論的根拠

引き下げ論の論拠は、「下げないとやっていけない」論と、「下げてもやっていける」論の二つがある。後者が「法人税パラドックス」説だ。

清水記者は「法人税パラドックス」論に焦点を合わせて、議論を紹介している。

1.法人税パラドックスとは「法人税率を引き下げても法人税収が上がる」という逆説的な現象のこと。ヨーロッパ諸国でこの20年間に約20%の法人税引き下げが行われたが、法人税収の対GDP比は伸びるという現象が起きた。

2.この現象を分析するため、財務省のシンクタンクが研究を行い、両者に因果関係はないとの結論を出している。(内容は後述)

3.2010年、議論を受けた政府税調は財務省チームの結論を追認している。

ということで、すでに3年前に議論は終わっている、というのが清水記者の結論である。

「下げないとやっていけない」論はすでにこれまでも紹介している。税率引き下げ競争、端的に言えば世界各国の心中自殺に類する行為だ。

清水記者はIMFのラガルド専務理事の発言を引用することでこれに答えている

法人所得税を引き下げてビジネスを巡る競争に打って出ようとするならば、格差はさらに悪化するでしょう。

ちょっとアウトフォーカス気味の引用だが…