下記は「脳科学辞典」というサイトの エピジェネティクス という項目
東大精神科の 村田唯さん という方が書いたようです。
定義: エピジェネティクスとは、DNAの配列変化によらない遺伝子発現を制御・伝達するシステムおよびその学術分野のことである。
うん、スッキリしています。
1.細胞分裂を通して娘細胞に受け継がれるという意味では遺伝学的な特徴を持つ
2.しかしDNA塩基配列の変化(突然変異)からは独立している。
3.エピジェネティクスによる制御は、化学的に安定した修飾であるが、環境要因によって動的に変化する。
4.エピジェネティクスは、遺伝子と環境要因の架け橋となる機構であると言える。
5.エピジェネティクスの主なメカニズムとして、DNAメチル化とヒストン修飾がある。
うん、いいんじゃないですか
“エピジェネティクス”提起の意味
発生に関してはかつて前成説と後成説があった。しかし遺伝子研究が盛んになるにつれ、遺伝子が全てを決定しているという前成説が支配するようになった。
ワディントンは、最終的な生物を形成する過程では遺伝要因と環境要因が相互作用していると主張した。
ワディントン説は前成説のモディファイで、後成説との控えめな折衷であったといえるでしょう。背景に前成説だけで押しきれない事象がいろいろ発見されたことがあると思います。 |
その後、1958年にナンネーが、「遺伝子機能の多様性のうち、DNA配列の違いによって説明できないものについての研究」と再定義した。
最近では、エピジェネティクスをより幅広く捉えて研究する傾向が強まっている。Birdは、「活動状態変化を記録し、伝え、永続させるような、染色体領域の構造的な順応」と定義している。
かえって分かりにくくなったようですが、DNAの塩基連鎖のみならず、「染色体の構造」全体を遺伝の座として設定したのは画期的だと思います。いわば「ネオ・ジェネティクス」の提起です。 |
DNAメチル化
以下の説明はえらく難しいのですが、一応私なりに読み解いてみます。
DNAの構造は一本の紐の上に4種類の残基が連なっているが、このなかでシトシンとグアニンが連続する部分は信号の「結び目」になっている。
シトシンとグアニンのつながり方には2種類あって、ひとつは水素結合、もうひとつはホスホジエステル結合(p結合)である。対抗鎖とつながるのが水素結合で、p結合は隣同士のつながりである。後者を“CpG”と表記する。
CpG結合した残基のうちシトシンの方にメチル化が起こる。メチル化というのはシトシンのピリミジン環5位の炭素にメチル基が付加されることである。これによってシトシンは5-メチルシトシンとなる。このメチル化を行うのはDNAメチルトランスフェラーゼという酵素であり、いくつかの種類があるようだ。
仕上げ屋メチラーゼ
DNAメチル化状態は細胞分裂後も受け継がれる。これは、DNAメチルトランスフェラーゼの一種で、メチル化の維持に関わる「DNMT1」の働きによる。
DNAが複製されると、親DNAと娘DNAが出来上がる。最初の段階(ヘミメチル化状態)ではメチル化された親DNAに対し娘DNAはまだメチル化されていない。このときDNMT1が出動して、娘DNA鎖に相補的にメチル基を付加するのである。
新規開店メチラーゼ
発生過程では、メチル化されてないDNAの最初のメチル化がおこなわれる。これは新規修飾DNAメチラーゼと呼ばれる。「DNMT3A」や「DNMT3B」がこの作業を担当する。
脱メチル化
受精直後の細胞では、維持メチラーゼ活性が抑制されたり脱メチル化が生じたりすることによって、ゲノム全体が脱メチル化されている。これに新規修飾DNAメチラーゼが刺さり込んで、新たにDNAメチル化状態のプロフィールが形成されていく。
“CpG アイランド”
ゲノム中にはCpGが豊富に含まれる領域が残される。これをCpG islandと呼ぶ。CpG アイランドは遺伝子のプロモーター領域に多く認められる。
DNAのメチル化が終了した後、ゲノム中のCpG配列の約60~70%はメチル化される。しかし、CpG island中のCpGは一般的に低メチル化状態にある。
メチル化がおよぼす影響
以上で、メチル化の機序は大体わかりました。次の問題はグアニンと隣り合ったシトシンのピリミジン環の5番目の炭素が、メチル化されることで、DNAにどんなことが起きるのかということになります。ここからが大変なところです。 |
ゲノム刷り込み(genomic imprinting)
多くの場合、父親由来の染色体上の遺伝子と母親由来の遺伝子の発現量はほぼ等しいが、インプリンティング遺伝子の場合、一方の遺伝子は発現するもののもう一方からの発現は抑制される。これらを調整するのがメチル化である。
いきなり、何の説明もなしに「インプリンティング遺伝子」なるものが登場しました。ウィキペディアで調べると、以下のように記載されています。 |
転写の抑制
一般的にプロモーター領域のDNAは、メチル化がすすむと遺伝子発現の程度が低くなる。これは次のような機序によると考えられる。
1.メチル化されたCpG配列にメチル化CpG結合に親和性のあるドメインタンパク質(MBD)が結合する。
2.メチル化CpGに結合したドメインタンパク質は転写を抑制する蛋白質複合体を引き寄せる。
3.転写抑制因子により、遺伝子の発現が抑制される。
以上から、メチル化は転写の抑制の役割を果たしていると考えられる。ただし転写を活性化する蛋白が結合する場合もある(レット症候群)
(著者が第3の役割としてあげたX染色体の不活化は、説明はされていないようです)
(このあと、DNAメチル化の解析方法が述べられているが、さっぱり分からない。とりあえず関係なさそうなので省略)
(ヒストン修飾については簡潔に触れられているだけで、しかも簡潔なだけに何を言っているのかわからない。ここも省略)
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