エピジェネティクス という言葉が気になったが、そのままにしていた。しかしやはり気になるので、ウィキペディアから調べてみた。

最初の定義は、ひどく不親切である。

一般的には「DNA塩基配列の変化を伴わない細胞分裂後も継承される遺伝子発現あるいは細胞表現型の変化を研究する学問領域」である。

これでは何も分からない。一生懸命、解読しようとすると

ただし、歴史的な用法や研究者による定義の違いもあり、その内容は必ずしも一致したものではない

とくる。人をおちょくっているのか。言語に関して無関心なのか。


文法的に解読すると。

まずは「学問領域である」ということが分かる。「サイバネティクス」とか「アベノミクス」と同じ“-ics”という接尾辞だ。

次にジェネティクスだが。これは遺伝学だ。これに“Epi-” という接頭辞がつくから遺伝学の親類筋の学問らしいということが分かる。

“Epi”というのは医学用語ではたいてい「上」とか「表面」をあらわす。そうすると「表面遺伝学」ということになるから分からない。

そこで最初の定義に戻ると、

遺伝子を研究するのが遺伝学であるのに対し、遺伝子によらない遺伝を研究する学問ということになるらしい。

そもそも言っていることが矛盾している。無理を承知で作った言葉だから晦渋になるのだろう。

そういう時は偉そうに開き直らずに、「そんな感じで使わせてください」と下手に出れば、こちらも分からないでもない、というものではないだろうか。

素人が考えると、古い話で恐縮だが、

ザ・ピーナッツは一卵性双生児で遺伝子型は同じだが、顔立ちは微妙に違っていて、テレビで見慣れているとある程度区別はつく。少なくともジュリーには見分けられただろう。

その違いをどう説明するかというのがエピジェネティクスの目標なのではないか。(間違っていたらごめんなさい)


ということで、概要の項に移る。

話は、ザ・ピーナッツの話ではなさそうで、むしろ細胞間の相違が問題のようだ。

つまり体細胞というのはすべて幹細胞から分化してできるのだが、その顔つきはまったく違っているのに、遺伝子情報は寸分違わず同じだ。その部位や働きによって変わるのだと説明しても、「なぜ?」と言われると答えに窮する。

それを研究しようというのが本来の「エピジェネティクス」の発想である。その言葉を作り出したのがウォディントンという人で、1942年のことであった。


これはとても良く分かる話だ。

つまり幹細胞が個別の体細胞になるには遺伝子、環境、そしてプラスアルファが必要だ。これはきわめて論理的に導き出される。「それじゃぁ、そのプラスアルファを研究しようじゃないか」ということだ。

ただ、42年という年には分子生物学もないし、DNAだって一般的な知識ではなかったはずだ。

では、その後の遺伝学や発生学の研究の進歩を通じて、どのように「プラスアルファ」の正体がわかってきたのか。


いま、真っ先に「容疑者」としてあげられているのが

DNAのメチル化およびヒストンの化学的修飾

というセオリーである(らしい。このウィキペディア氏の文章は本当に読みにくい)

「DNAのメチル化」というのは、遺伝子情報を発言させるか否かのオン・オフ・スイッチらしい。メチル化されると発現し、されなければ眠ったままとなる。

「ヒストンの化学的修飾」というのは“メチル化されると発現”というプロセスの話である。
DNAの特定部位がメチル化されると、ヌクレオソーム中のヒストンに物理化学的な変化がおきる。この変化が遺伝子発現を促すようである。

その他にもいろいろな機転があるようだが、とりあえず省略する。


ただここまでなら、あえてエピジェネティクスという御大層な名前を振りかざすまでもない。遺伝学の一分野と考えても何の支障もない。

それが論争になっているのは、どうもこの「ヒストンの修飾」というのが時期の長短は別に持続性を持つということで、これも一種の遺伝といえるのではないかという議論が出てきてからである。

ウィキペディア氏は下記のような主張を紹介している。

「エピジェネテックな形質とは、DNA塩基配列の変更を伴わない染色体の変化に起因する安定した遺伝性の表現型を示すもの」(Bergerら, 2009年)

ということで、DNAを介する遺伝系列と独立した「第二の遺伝系列」と主張している。

ウィキペディア氏は、だからエピジェネティクスはその存在自体がポレミックな学問領域だと総括しているのであるが、どうもこの説明には納得出来ない。

「プラスアルファ」は間違いなく存在するのであり、その探求は間違いなく実体的な研究の領域を形成する。それらの研究実践をエピジェネティクスと呼ぶことに何の躊躇も必要ないだろう(どう呼んでもいいが)。


ウィキペディア氏の説明はこの後も延々と続くが、まことに取り留めがなく難解かつ冗長で、読むに耐えない。脳細胞のヒストン修飾が足りないのか過剰なのか…

だれか、分かりやすいダイジェスト版を作ってくれ。