ゲノム解析の結果では、チンパンジーと人間のDNAの98.5%が一致しているという。
だからゲノム屋さんはヒトは猿だという。猿が人間になったのではなく、猿がヒトという猿に進化したのだということだ。まさに地球は「猿の惑星」なのだ。

それはそれでわかるが、ではなぜチンパンジーと人がこれほどまでに違うのか。

ボノボというチンパンジーの亜種がいて、生態的になかなか面白いらしい。
あれこれの事象を取り上げてチンパンジーより人間に近いとか主張する向きもあるようだ。しかしそれはあくまで解釈にすぎない。
この議論は本質を取り違えていると思う。

ヒトとチンパンジーの分化が400万年ころとすれば、時期的にはホモ・エレクトスの出現とかなりかぶる可能性がある。つまりDNAからはヒトとチンパンジーの差は説明がつかないということになる。

もちろん、最大の要因は気候であろう。度重なる氷河期は、そのたびにアフリカ以外のヒトモドキをすべて淘汰してしまった。一度はくぐり抜けたドマニ人にも、次はなかった。
逆に温暖期には、大地溝帯の東側で生物の過剰状態とサバンナの乾燥化が進み、人口圧が高まり、北の大地へと押し出される状況もあったのかもしれない。

霊長類、ホモ・エレクトス、ホモサピエンスの出自がいずれもアフリカであるという事実があって、それ以外の理由ではプッシュ&プル要因の全般的説明がつかないと思う。

しかしそれだけではゲノムにおける異常なまでの近縁性と、生態的な有り様の懸河の隔たりもまた説明がつかないのである。

私は、チンパンジーやボノボは退化してチンパンジーやボノボになったのではないかと想像する。
チンパンジーは森林に決別しようとしなかった霊長類であり、ボノボは一旦草原にでたにも関わらずジャングルに戻ってしまった霊長類なのではないか。

動物が水中から陸上にでた時、最初は両棲類であった。いわば逃げ道を確保しながらの陸上進出であった。ワニはふたたび水辺に戻った。哺乳類の世界でも、カバが鯨になって海に戻ったといわれている。

とすれば、同じように霊長類も草原に出てそのまま頑張ったのが人になり、戻っていったのがボノボであり、両生的な世界に留まったのがチンパンジーであり、ついに出ようとしなかったのがゴリラであるのかもしれない。
とすればゲノム解析における驚くべき相互の近似性も分かりやすく説明ができそうだ。

ジャングルを農村とすれば、専業農家で残ったのがゴリラで、兼業農家がチンパンジーで、Uターン組がボノボで、都会に住みついて労働者として生きる決意をしたのがヒト、という分類はいかがであろうか。