それでG36が大変優れたライフルであることはわかったが、HK社がこれを各国にヤミ販売してるらしい、というのが次のテーマだ。

それらファクトの中で一番気になるのがメキシコのFX 05との関連だ。

これも同じくウィキペディアから

FX-05 シウコアトル(Xiuhcoatl

メキシコが開発したアサルトライフル。メキシコ軍に配備されている。名称は、ナワトル語で「炎の蛇」を意味する。

G36同様に基本型の他、カービン型、精密射撃型、軽機関銃型のバリエーションが用意されている。

H&K G36によく似たデザインをしており、違法コピーでないかとの疑いが取り沙汰された。

2007年2月1日、この問題について話し合うため、メキシコシティに てメキシコ国防省(SEDENA)の幹部とH&K社の代表者が会談を行った。

SEDENA側はFX-05がG36の違法なコピーかもしれないと考 えていたが、H&K側はあくまで異なる銃器であるという見解を示した。最終的にSEDENAとH&Kの間で起訴や賠償が発生することはなかった。

ということで、よく読むとまことに奇妙な会談である。

普通は違法コピーだと訴えるのがメーカーの側で、メキシコ側は防戦に回るのが常識的な感覚だ。当然そこにはウラの動きがあるのであろう。

ウィキペディアの著者はその辺りには触れず、似ているけど違うものだと主張している。

これはちょっと変なので、他の資料にも当たる必要がありそうだ。

[] メキシコ軍のアサルトライフルFX-05

というサイトには、以下の記載がある。

メキシコ軍では長らくH&K社のアサルトライフルを使っていたが(G3シリーズと一部G36)、2005年に自国独自のアサルトライフルの開発計画を決定。

2006年には特殊部隊の隊員が装備している姿が確認されている。

報道やイベントの写真が存在するにも関わらず公式写真が公開されていないのは保安上の理由だと書かれている。

これも変な話で、2005年に開発計画を決定して、その翌年には早くも実用に供されている。国軍の制式銃がそんな簡単に作れるものとは思えない。非公開というのも合点がいかない。

日本語の情報はここまでだ。


The Fireams Blog

というサイトに2011年1月付で

Germany suspends H&K exports to Mexico

という記事が掲載されている。元はAP電。

ドイツ政府は、H&K社にメキシコへの武器輸出を禁止した。

ドイツでは、メキシコ国内に武器が拡散しているとの懸念が広がっている。そこはベルリンが人権問題を理由に武器輸出を禁じたところだ。

AP通信が入手したレターによれば、1月4日付の経済省から武器メーカーへの手紙にはこう書かれている。

御社の“武器及びその他の防衛商品”のメキシコへの輸出申請は、ドイツ司法当局の調査の結果が明らかになるまで中止される。

H&K社はチアパス、チワワ、ゲレロ、ハリスコの各州で、G36攻撃ライフルをメキシコ警察に供給したとして検察庁により調査中である。

これらの地域では広範な人権侵害が行われていると考えられ、ドイツ政府は武器輸出を禁止している。

H&K社は、それらの4つの州には武器は輸出されていないと主張している。彼らが輸出したのはメキシコシティーを管轄する「中央武器購入部局」であり、それは国防相に監督されているという。

H&K社は、12月末の声明で、「メキシコ国内のいかなる州へも売却の予定はない」と声明した。


これでウラが読める。

つまりH&K社は、ドイツ政府により禁じられている麻薬・暴力・腐敗地域への武器輸出を迂回するために、“FX05”なる機種をでっち上げたわけだ。

そしてこれをメキシコの“純国産品”として売りだしたわけだ。

それだと、アメリカのライフルに似せたり、「うちとは関係ない立派な国産品です」と国防相に弁解する、怪しげな経過もすべて見事に説明がつく。

それにしてもえげつないものだ。