ハーゲン四重奏団の動画が面白い。

ザルツブルクの大ホールでのライブ録画だ。

曲はベートーヴェンの作品135

フォトジェニックなビオラのお姉さんが仕切っている。普通と違いビオラが内側に座り、微笑みを浮かべながら第1,第2バイオリンとチェロにアイコンタクトしている。

第二バイオリンは第1バイオリンの方は見向きもせずにひたすらビオラを仰ぎ見ている。

こうやって見ていると、この曲の妙味は楽器の間の音の受け渡しにあるということがよく分かる。

4人がビールを飲みながらレントラーを踊っていて、ある時は第1バイオリン、ある時はチェロが主役になったり、ある時は二人が抱き合ってのダンスだったり、低音弦二人と高温弦二人の掛け合いだったり、そうやって進行しながら、時にはシリアスになったりと、けっこうハチャメチャのバラエティーなのだ。

ベートーヴェンの後期四重奏曲をそういう眼で見たことがなかったから(“眼で見る”というのがそもそもヘンですね)、ヨハン・ストラウスのように演奏しそれを聴くというのは、ひとつの体験だった。


このカルテットは変なカルテットだ。

ザルツブルクの生まれで、兄弟カルテットだ。親父はモーツァルテウム音楽院管弦楽団のビオラの首席だ。ガチガチの「本家・元祖」だ。

頭と技術と努力でのし上がったのではなく、無試験で東大合格したようなものだ。

4人兄弟でカルテットを組んだのが、第2バイオリンの長女が「あたしはダメ」と降りた時にプロのカルテットになった。

長女が第2ヴァイオリンを弾く「死と乙女」がYouTubeにある。4人が弾いているというより後ろにいる親父がやらせている感じがもろにある。

長女が辞めてから一気に次女のビオラが仕切るようになった。そしてプロの楽団になった。プロになった後も、最初は長男の第1バイオリンがバリバリと弾きまくって、他の3人はそこについていく感じだったのが、今は4人が独自の役割を持ちながら全体としてアンサンブルを形成する感じになっている。

それが作品135の四重奏だろう。

前に、ウィーン・フィルのコンサートマスターのバッハを聴いて、どうしようもないご当地の強みを痛感したが、このカルテットも技術の巧拙を超えた「こうでなくちゃ」という強い説得力を感じてしまう。

競馬と同じで、音楽も「毛並みが走る」ことになるのであろうか?