雇用 どの数字を見ればよいのか

去年12月の労働力調査が発表され、各紙は完全失業率が低下し、求人倍率が上昇したと報じている。

いよいよアベノミクスの効果が現れたとでも言いたいようだ。

たしかに身の回りを見ても、建築・建設関係は景気がいいようだ。人手が足りなくて工事が発注できないという話も聞く。

しかしこれは、東北の復興景気のおこぼれで、北海道の景気が上向いたからではない。おまけに消費税間近の駆け込みも乗っかっているから、4月以降の見通しはとても読めるものではない。

人手が足りないのも、長期の不況で建設関連企業がバタバタ倒産したためもある。

ということで、雇用の状況を見るのに失業率や有効求人倍率が有効かという塗装ばかりとも言えないのがご時世である。

何度もグラフを出すのも鬱陶しいので、計算だけしてみる。

1.完全失業率

これは3.7%で前月比0.3%の低下である。これはリーマン・ショック後最低の数字だ。

実数で言うと20万人減の241万人となる。この20万人減が問題だ。同じ統計で、非労働力人口が22万人増加しているのである。

この非労働力人口というのは仕事もせず求職活動もしていない人間のことである。つまりハローワークに登録していない「もぐりの失業者」のことだ。

差し引き2万人、「失業者」は増加していることになる。実際に就業者数は4万人減の6346万人となっている。実数とのズレは、在職死などがカウントされるためだろう。

だから、雇用の実態を見るには就業率で見ていかなければならないのである。そして失業率は下がってはいないのである。

2.有効求人倍率

12月の有効求人倍率は1.03倍となった。実に久しぶりに1以上の数字を記録したことになる。

ただしこれも統計上のマジックで、(求人件数)/(求職者)であり、この分母が問題になる。

求職者というのは完全失業者に新規求職者を加えたものであり、学校卒業予定のものも含まれる。これも7万人減少している。

完全失業者、新規就職希望者と減ったものだけを分母に加え、増えている「もぐり失業者」を排除すれば、この求人倍率も上昇することになる。

これも倍率で見るよりは求人実数で見たほうが状況を正確に反映するだろう。

倍率の地域差も相変わらずで、東京で1.48倍、東北各県で1.3倍であるのに対し、北海道、九州、沖縄では大幅に割り込んだままである。

3.雇用の質

非正規雇用者数は1967万人、雇用者全体の37.5%という数は過去最高だ。

そもそも求人が非正規中心となっているから、今後も非正規が増えていくことは間違いないだろう。

正規雇用だけに絞った有効求人倍率は0.66倍にとどまっている。

つまり求人と求職が1対1でマッチしたとしても、非正規雇用者は4割になる。そして正規雇用に紛れ込んだブラック企業が3年で労働者を食いつぶしていけば、非正規率はさらに上がることになる。