これまで、「空洞化」という場合、大企業を中心とする海外進出による「産業の空洞化」のことを指していた。
しかし、実際には3つの空洞化が同時に進行しているのではないか。すなわち「産業の空洞化」に加えて「庶民のフトコロの空洞化」と「税収の空洞化」である。
この3つはそれぞれ独立した形で進行している。
もちろん、それらは密接に関連しているし、それなりの因果関係もある。
しかしあちら立てればこちら立たずで、対策上は別個に考えなければならない独立変数を形成している。
そのことは空洞化によって失われた「実質」がどこに流れたかを考えればはっきりする。
「産業の空洞化」によって失われた産業の「実質」は海外に流れている。「庶民のフトコロの空洞化」によって失われたフトコロの「実質」は大企業の内部留保となって積み上がっている。「税収の空洞化」によって失われた税収の「実質」はタックスヘヴンにしまい込まれている。

ところがこれに対する対策は、実のところまったく打たれていない。それどころか、ますますこの空洞化を助長する方向が示されている。

産業空洞化対策: 民主党政権時代に海外M&Aが奨励された。当時は円高対策と言われたが、円安時代になっても、この政策が撤廃されたという話は聞いたことがない。
現にソフトバンクやサントリーの大型買収が経済面を賑わせている。

庶民のフトコロ空洞化への対策: 賃金の問題もあるが最大の問題は雇用であろう。派遣や非正規はむしろ奨励され、「解雇特区」まで生まれようとしている。

税収空洞化対策: 穴だらけの税収対策だが、おおまかに言って3つ問題がある。ひとつは保険・年金の掛け金収入が止めどなく減少していることだ。ふたつ目は富裕層課税が減少の一途をたどっていることだ。とくに海外預金への課税が遅れている。
みっつ目は企業の海外利益への課税が殆どできていないことだ。数字は忘れたが、ケイマンやルクセンブルク、スイスなどの銀行には国家予算をはるかに上回る利益が積み上げられている。日本の海外預金はアメリカを上回り世界一と聞いた。

日銀券の大量発行も、円安誘導も、消費税もつまるところ大衆収奪だ。財政の改善は「空洞化」によっては解決しない。国力の増大をもたらすことなしに、真の「財政再建」は不可能である。

ニセの財政再建は、いつの日か国際投機資本に見破られる。売り浴びせに耐えられないほど、国力が弱体化する日がやってくる。

「わが亡き後に洪水来たれ」か