児童手当差し押さえは違法

児童手当というのがある。これは児童手当法という法律に基づいている。申し訳ないが、そんな法律があることも知らなかった。

第一条はこうなっている。

家庭等における生活の安定に寄与するとともに、次代の社会を担う児童の健やかな成長に資することを目的とする。

そのために児童を養育する人に支給されるそうだ。かなりざっくりした法律である。

この法律の良い所は第15条だ。

児童手当の支給を受ける権利は、差し押さえることができない

と具体的に禁止されている。

子供のために使わせなければならないという、使途限定付きの給付ということになる。

たとえば税金や保険料を滞納している家庭では、児童手当も収入のうちだから差し押さえたくなるのが役所の人情だが、それを先回りして禁止しているわけだ。

そこで役所は考えた。

児童手当は手を付けてはならないが、いったん銀行に振り込まれれば、それは児童手当ではなく、銀行預金となる。だからそれを差し押さえても違法とはならない。

これはいくらなんでもアコギな解釈である。

ところが、最高裁がこの解釈を容認した。その後、行政機関はあらゆる場面にこの解釈を適用するようになった。

ただ、弁護団によると、最高裁の判断は微妙なところで、「否定はしなかった」ということらしい。

したがって、下級審が「否定」しても問題はない。あとは判事の勇気次第ということになる。

それが今回の広島高裁松江支部の判断である。

実質的には児童手当を受ける権利自体を差し抑えたのと変わりがないから、児童手当法15条の趣旨に反するものとして違法である

そして児童手当を原告に返すように命じた。鳥取県(被告)は上告せず、この判決が確定した。総務省は高裁判決を受けて全国の自治体に通知を発した。

寄稿した勝俣弁護士によると、これで終わったわけではなく、行政はまた新手を考えだす可能性もあり、まだまだ闘いは続くと言っている。

ご健闘を祈る。