バブル崩壊後、日本は財政刺激策を継続したが、金融政策面でのサポートがなかった。2000年代前半の量的緩和では逆に、財政面でのサポートが不足していた。

ついに、コーディネートされた金融・財政政策が登場した。それぞれ個々は以前に実行されたものだが、それがコーディネートされている点に新味がある。

不況下の金融政策

金融緩和は原理上、それ単体で効果を発する。さらに金融緩和は、人びとのマインドを動かすことで効果を発揮する。

しかし金融緩和だけで、日本の抱える長期的な課題を解決できない。日本経済における長期的課題とは少子高齢化である。その結果、投資需要は縮小し、それが実体経済に影響をもたらす。

だからこそ実質金利(名目金利-期待インフレ率)を大 きく引き下げ、あるいはマイナスにしなければならない。そこではインフレが必要とされている。この数年にわたって、日本の実質金利は他の先進国よりも高かった。それはデフレ経済でインフレ率がマイナスになったためである。

日本経済の長きにわたる失敗のは、日銀の政策が“船に乗り遅れた”からにすぎない。

「ゼロ金利」の下で、実質金利を下げるにはインフレを引き起こすほかない。

期待インフレ率が上がれば景気が刺激されることになる。そして国民は手元の資産目減りが予想されるのでお金を使う理由が生まれる。さらに、そのインフレによって日本の国家債務も減少する。

2006年3月、日銀は量的緩和を停止した。いま振り返っても、愚かな選択だった。

日銀は、「デフレはそれほど悪いことではない」「デフレは自らの力が及ばない要因によって引き起こされた」と訴えてきた。これこそが、日本のデフレからの脱却を妨げるものだった。

安倍首相の非日本人的な決断力への期待

長年にわたって、日本では「決められない政治」「決められない首相」が当たり前のスタイルだった。アメリカももう、その罠にはまっている。何が問題なのかは理解 していても、それを実行する政治力がない。

市場は「国の指導者は大それたことをしない」と考える。ほんとうは違う。指導者は馬鹿げたことをする。あるいは非伝統的な決断をする。そのことを市場に納得させる必要がある。

アメリカが1930年代の世界恐慌で打ち出した大胆な金融政策、戦前の日本において高橋是清蔵相が昭和恐慌を沈静化させたプログラムなどが歴史的な成功例だ。

アベノミクスは、プリンストン大学の経済学者たちが十数年前に書いていた論文の内容にそっくりだ。

バブル崩壊後、日本は財政刺激策を継続したが、金融政策面でのサポートがなかった。2000年代前半の量的緩和では逆に、財政面でのサポートが不足していた。

ついに、コーディネートされた金融・財政政策が登場した。それぞれ個々は以前に実行されたものだが、それがコーディネートされている点に新味がある。


しかしこの日本通というのがクセモノで、一知半解というか半可通というか、97年不況の原因も、内部留保が一方的に溜まっていくという構造上の問題も、産業空洞化や大企業の多国籍企業化の問題も視野の外だ。

彼みずからが言うように、彼は日本経済の研究者ではなく門外漢だ。そのことはさておくとしても、日本におけるマネタリズム政策の限界を原理的に押さえていないことは致命的だと思う。

「貧困層の引き上げを主たる柱とする内需の拡大こそが、すべての基本に座るべき」という主張(いわゆる内需拡大論)は我々と一致する。

そのためには、金融・産業・構造政策の三位一体での推進が必要という枠組み概念も一致する。しかしそこからはまったく異なった道を歩むことになる。

そして彼らは恥をかくことになる。