「マクロライドが肺がんにも効く」という文献があった。

これは原著ではなく講演要旨である。したがって範囲が広く、多少言い過ぎのところもあるかも知れない。

そのことを前提に、要旨の要旨を紹介する。

日本抗生物質学術協議会[2005 年] 講演会要旨

MIC にとらわれない感染症治療

-マクロライド長期治療の経験を生かして-

三笠桂一

奈良県立医科大学感染症センター

1. はじめに

DPBを代表とする難治性慢性下気道感染症は固有の細菌叢を形成し,常に同一の細菌が持続感染している。

従来の短期化学療法の繰り返しではなく長期化学療法が必要である。そのためにマクロライドの長期治療について検討した。

本治療法の特徴は緑膿菌感染例で除菌率が12.5% であるのに臨床効果の有効率は87.5% と大きな乖離を認めることである。

2. 長期治療の臨床効果

慢性下気道感染症20 例(うち15例はDPB)にEM を3 年以上投与した。

TTAによる検出菌は緑膿菌8例・インフルエンザ菌8 例など。

3年後にPaO2と喀痰量は有意な改善を示した。

インフルエンザ菌では菌の消失率と一致したが、緑膿菌では除菌率12.5% にとどまった。

3. EM長期治療の問題点

第一にEM無効例があること

第二にEM長期治療の終了時期

第三に耐性肺炎球菌の問題

1) EM無効例への対策

CAMが有効なことがある。

EM無効の慢性下気道感染症13例にCAM を投与し、PaO2 が有意に上昇し,喀痰量も減少した。うち7例で効果が持続した。高度の進行症例では再燃が見られた。

これらの再燃例でジョサマイシンが有効なことがある。

2) マクロライド長期治療の終了時期

EM長期治療中止により再増悪する症例がある。再増悪例は治療開始時に既に病態が進行しており,EM中止時には未だ症状が残存してた症例であった。

3) マクロライド長期治療中の耐性肺炎球菌

マクロライド長期治療中に肺炎球菌により急性増悪をきたしたケースが16例あった。

これらはアンピシリン、セファゾリン、イミペネム等で対応可能であった。

EM投与群では,mefA/ermB 陽性耐性肺炎球菌の定着・増殖は抑制できないのに対し,CAM投与群では mefA 陽性耐性肺炎球菌の定着・増殖を抑制でき、より有効である。

4. 肺癌への応用

マウスのエールリッヒ腹水癌に対してEM を投与したところ腫瘍は縮小し生存率が向上した。

われわれは,肺癌治療への応用を考えた。そして切除不能非小細胞肺癌への従来の治療を終了後,CAMを投与した。

CAM投与群において有意に生存期間が延長した。体重・ヘモグロビン・コリンエステラーゼが有意に改善した。

悪液質を誘導するIL-6, TNF-a は有意に低下した。この機序を通じて悪液質を改善している可能性が考えられる。

抗腫瘍性サイトカインのIL-12,IFN-g は増加し、NK活性も高まった。

さらに接着因子のインテグリンの発現を抑制し、転移が抑制された。

5. おわりに

菌が存在していても病態に影響なければ除菌の必要はない。癌の場合も転移しなければあるいは増大しなければむやみに攻撃する必要はない。

マクロライドは癌と宿主との共存を可能にした。


多分、病院の先生はこういうたぐいの大風呂敷が嫌いだから、クラリスを切っているのではないだろうか。