ニュルンベルク裁判の諸原則

Principles of the Nuremberg Tribunal, 1950

スノーデンの紹介の中で「ニュルンベルク宣言」というのが気になっていた。

医者の世界ではニュルンベルクの綱領というのが有名で、人体実験の禁止をうたった宣言だ。これが元になって「ヘルシンキ宣言」というのができ、これがインフォームド・コンセントなど「患者の権利宣言」へとつながっていく。(と、主張する人々がいる)

調べたところ、別にニュルンベルク宣言という文書が存在するわけではない。経過はやや複雑だが、

1.ニュルンベルクでナチ戦犯を裁く裁判が行われた。

2.このとき、平和に対する犯罪とか人道に対する犯罪という概念が立ち上げられた。

3.それまでこういう概念はなかったので、国連総会がこれらを国際法上の概念として承認した。

4.そして以下の7項目が、「ニュルンベルク(裁判)の諸原則」として国際的に承認された。

という形になる。

以下に正文テキストを紹介する。(どこにも日本語訳がないので仮訳しておきました)

ただこのテキストにはスノーデンが引用したくだりはない。

 

原則 Ⅰ

どのような人物でも、国際法に照らして犯罪を犯せば、有責であり、その故に罰を受けるに相当する。

 

原則 Ⅱ

たしかに、国際法の下で犯罪を構成するような行為を犯したからといって、それに対して罰を課すような国内法がないことがある。

しかし、その故に、国際法を犯したものが責任を免れるようなことにはならない。

 

原則 Ⅲ

国際法の下で犯罪を構成するような行為を犯した人物が国家元首であったり、責任ある政府当局者であったりする場合がある。

しかし、その故に、国際法を犯したものが責任を免れるようなことにはならない。

 

原則 Ⅳ

ある人物が彼の属する政府の命令に従って行動する場合がある。あるいは上級者の命令にしたがって行動する場合がある。

しかし、道徳的選択が実際に可能な状態での行動であれば、その人物は国際法の下での責任を免れえない。

 

原則 Ⅴ

国際法の下での罪に問われた人物は、すべからく事実と法に基づく公平な裁判を受ける権利を有する。

 

原則 Ⅵ

以下に提示される犯罪は、国際法の下での犯罪行為として処罰されうる。

a 平和に対する犯罪

(1) 侵略戦争、あるいは国際的な条約、協定、取決めに違反する戦争。それらの計画、準備、開始、実行。

(2) (1)に示されたいずれかを実施する計画あるいは陰謀への参加。

b 戦争犯罪

戦争に関する法律あるいは慣習に対する違反を戦争犯罪とする。これには以下がふくまれるが、これに限定されるものではない。

* 占領地での、殺人、虐待、奴隷労働その他の目的の民間人の強制移動

* 捕虜、海上要員(船員?)の殺害、虐待

* 人質の殺害

* 公的・私的資産の略奪

* 都市、町または村の理不尽な破壊

* 軍事的必要性によって正当化し得ない蹂躙。

c 人道に対する犯罪

民間人に対する殺人、排除、奴隷化、強制移住その他の非人道的な行為、

政治的、人種的、宗教的見地に基づく迫害、

このような行為、迫害が平和に対する犯罪、戦争犯罪と関連して実行された場合、これを人道に対する犯罪とする。

原則 VII

原則VIに掲げた 平和に対する犯罪、戦争犯罪、人道に対する犯罪に加担することは、国際法の下での犯罪となる。

 

 1950年7月

国際連合国際法委員会(Document A/1316)