「平和・安全保障研究所」というサイトがあって、そこに下記の文章が載せられている。

宝珠山 昇  GSOMIAとは

著者の名は“ほうしゅやま”と読む。元防衛施設庁長官で日米防衛協力等関係に参画した経歴を持つ。

かなり前の報告(2006年)だが、GSOMIA(ジーソミアと読む)の大体の性格は分かる。かなり素人には読みにくい文章なので、私なりに要約して紹介したい。

 

はじめに GSOMIAの4つの原則

 GSOMIAは、「General Security of Military Information Agreement」を短縮したもの。(「軍事情報の総合的保安に関する協定」ということになろうか)

これは、米国と他国との一般協定であり、米国と同水準で軍事秘密を保護するという合意である。これにより米国と他国との間の情報の交流・共有を円滑に実施しようというものだ。

現在、NATO諸国、イスラエル、エジプト、インド、オーストラリア、シンガポール、タ イ、韓国など63か国が締結している。

著者は、「内容の詳細は明らかではない」とした上で、四つの規定がふくまれているようだとしている。それは

①情報の受領国政府は提供国政府が行っているのと同程度の秘密保護をする こと、

②受領国が提供国から受けた秘密の情報は提供国政府の承認なしに第三国に開被しないこと、

③提供された目的以外に使用しないこと、

④受領国政府は当該情報に含まれる特許、著作権、商業上の秘密等の私的権利を尊重すること

となっているが、要するに①対象国の一般的守秘義務と、②第三国への漏洩の禁止の2つだ。

法制上、軍隊を持たない日本にとっては、無縁の協定だ。

 

「保護される情報の定義・対象は、口頭、文書、写真、録音、手紙、メモ・スケッチ、模型、装置、製品などあらゆる物理的形態をふくむ」というから事実上無限定だ。

次が秘密事項を取扱う人物の適格性に関する証明だ。これは「セキュリティー・クリアランス」と呼ばれる。政府の関係職員ならだれでもいいという訳にはいかない。情報・資料を利用するためには、その個人の秘密保全に対するサーティフィケイトがもとめられる。

また、秘密情報を下請け契約者へ移転するときに、その契約者に対しても適性を確認することが義務づけられる。

ということで、問題は情報の対象、適格性評価などで包括性がもとめられることにありそうだ。

 

現代における機密情報

A. 情報テクノロジーの進歩に伴う機密分野の拡大

C4ISRの急速な発達の成果を速やかに活用することがもとめられるようになった。

C4ISR: Command, Control, Communication, Computer, Intelligence, Surveillance and Reconnaissance

の略。日本語では「指揮、統制、通信、コンピューター、情報、監視及び偵察」ということになる。
ウィキペディアによると、軍隊における情報処理システム。指揮官の意思決定を支援して、作戦を計画・指揮・統制するための情報資料を提供し、またこれによって決定された命令を隷下の部隊に伝達する。すなわち、動物における神経系に相当するものであり、部隊の統制や火力の効率的な発揮に必要不可欠である。

このため、同盟国間で短時間に緊要な情報を交流し、とくに秒単位での対応となる共同作戦に必要な戦略・戦術情報の共有が、任務の成否を決するようになった。

GSOMIAは、研究、開発、調達、訓練、運用、計画、情報などを含む広範な分野を対象としており、今後重要性を増していくだろう。

B.  テロの脅威に対抗する多層のネットワーク構築

大量破壊兵器(核・生物・化学兵器やミサイル)の拡散等によって、無差別で突発性な脅威がもたらされている。このような脅威への対応措置は複雑・困難さを抱えている。

これに対処するには、研究、開発、 生産、運用、修理、備蓄、補給、訓練などにおいて、先進諸国及び官民が緊密に協力することが必要である。

多層のネットワークによる対応体制を構築するためには、民間企業を含めた機密情報の交流・共有体制がもとめられている。

C. 兵器・装備の技術導入の効率化

例えば、現在米国まで運んで行っている「ブラックボックス」の修理を日本で行えるようにすれば、整備や補給を効率化し、共同の訓練や作戦の効率も高まる。そのためには日本企業がセキュリティー・クリアランスを取得し得るよう日本国政府が努力(即ち GSOMIAを締結)しなければならない。

GSOMIAが締結されれば、現行では長期間を費やしている個別事案毎の協議も大幅に短縮され、効率化する。

(ということで、C のライセンス欲しさの取引というのが本音のようです)


日本の対応

 これまでの日本政府は、GSOMIA締結に対して否定的な立場をとってきた。それは以下の答弁(1988年の衆議院内閣委員会における外務省答弁)に総括される。

「日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法」がすでにあり、これを根拠に、事案毎に個別の協定を結ぶことで対応できる。したがって「このような包括的な秘密保全のための取り決めを米国と結ぶことは全く考えていない」 

 

今なぜGSOMIAを急ぐ必要があるのか

しかしながら、ということで著者はGSOMIAの必要性と“緊急性”を強調する。

(持って回った言い方のところは、私の判断で簡略化してある。誤読はしていないと思う)

① GSOMIAが締結されていないと、米国は日本の機密情報保護体制が弱いものと受け取り、日本への機密情報の提供にあたって懸念を持つだろう。

② 機密情報の質、量、迅速さが飛躍的に増大した今日では、従来の個別方式による「情報共有及び情報協力の向上」は困難である。

③ GSOMIAの締結は、先進諸国の民間企業間の先端技術の円滑な交流・共有 のインフラを拡大し、日本企業の技術交流基盤を強化し、科学技術立国の国策の促進に寄与する。

④ 更に、GSOMIAは、秘密保護のための盗聴やそのシステムに関する重要な制度上の情報 を含むともいわれ、これはスパイ天国とも言われる日本の情報体制の改革・向上に有用である。

(これは逆でしょう。NSAやCIAがやった盗聴内容のおすそ分けにあずかりたいということでしょう)

最大の課題は何か

最大の課題は、日本企業において機密業務に携わる従業員に与えるセキュリティー・クリアランスを米国のものと同水準であると米国政府が認定できる仕組みを開発することである。

現在は、秘密の保全業務に携わる日本の従業員のセキュリティー・クリアランスも、そのつど個別事案毎に評価されている。これを日本国政府と民間企業の契約によって担保・保障する。そして米国政府が同意するようもとめる必要がある。

GSOMIAは、すべての事案に共通に適用され、セキュリティー・クリアランスを締約国政府が一般的に保証することを義務付けている。米国政府は、現在の日本の枠組みを、GSOMIAのセキュリティー・クリアランスには適合しないと判断している。

日本の機密情報保護体制の充実にも寄与 

機密情報の保護態勢の向上は、広範な分野での国民保護に欠かせない重要インフラの充実につながるものである。

国際テロ・凶悪組織犯罪の捜査・検挙能力を強化する上でも、感染症の予防や対処の薬剤の研究・開発の分野でも、機密情報の交流・共有態勢の日本の弱さが障害となっており、この強化が大きな課題である。(この部分は口からでまかせの無責任な言動としかとれません。アホらしくて突っ込む気にもなりませんが、言い出すそばから言葉が矛盾してくることに気づかないのでしょうか)

GSOMIAの締結を契機に、日本の機密情報保護体制が充実し、 情報能力が向上して行くことを期待する。 


ということで感想が二つ

1.GSOMIA は日本の軍産複合体が米国の軍事技術をほしいために、秘密保護の包括的な統制をシビリアンにまで及ぼそうという憲法違反の協定です。ただそれだけつまみ食いするのでは済まない包括的なものも含んでいます。逆説的になりますが米国に対して一切秘密を持たないという誓いの強制です。

2.日本がスパイ天国ならアメリカはスパイ帝国です。その米国の前で大股広げて、ケツの穴までさらけ出しましょうというのが秘密保護法の本態です。防諜機能の強化どころか、防諜活動そのものの放棄です。それが国民に知られるのが嫌だから、秘密にしましょうということになります。

3.確かに秘密保護法案はGSOMIAを中核としているようですが、誰かが悪乗りして、とんでもないものにまでふくらませているようです。そのため目的・範囲その他において、法律の体をなさなくなってしまっています。悪法というより愚法です。