Googleの脱税手口として有名になった言葉だ。

喫茶店のモーニング・サービスのセット・メニューみたいだが、飲めもしないし、食えもしない。強烈な腐臭を放っている。

出処は本庄さんの「導管」論文の最後の部分だ。


グーグルのタックス・スキームは、“ダブル・アイリッシュ&ダッチ・サンドイッチ”と呼ばれる。

それは下記の記事によれば、以下のように要約することができる。

(Jesse Drucker: “The Tax Haven That's Saving Google Billions” Bloomberg Business week 2010 年10 月21 日号)

1. 米国親会社はアイルランド子会社とライセンス契約を結ぶ。この子会社は「グーグル・アイルランド・ホールディング」と呼ばれる。

2. この子会社は、アイルランドで設立された法人であるが、バミューダで支配管理されている。このためアイルランドでは非居住法人となる。

3. 米国親会社は、もう一つのアイルランド子会社を持っている。この子会社は「グーグル・アイルランド」と呼ばれる。

4. 「グーグル・アイルランド」社は、ダブリンの中心に本店を持ち、約2000 人の従業員を雇用している。「グーグル・アイルランド」社は、グーグルの海外営業の88%を担っている。

5. 「グーグル・アイルランド」社は、バミューダにある「グーグル・アイルランド・ホールディング」社に5.4億ドルの使用料を支払っている。このため税引前利益の額は、売上高の1%未満しかない。

6. アイルランド法人税の課税標準税率は12.5%であるが、この「支払使用料」という名目の利益移転により、租税を回避している。

7. アイルランドは、バミューダなどのタックスヘイブンに支払使用料を払うのに際し、源泉徴収税を課している。これを回避するため、使用料はオランダを経由して支払われる。

8. 米国親会社は、上記の目的のためオランダにも子会社を設立している。この子会社は「グーグル・オランダ・ホールディングスBV」と呼ばれる。オランダ子会社には従業員はいない。

9. 「グーグル・オランダ・ホールディングスBV」社は、アイルランド子会社の「グーグル・アイルランド」社から、使用料5.4億ドルを無税で受け取る。そしてその99.8%をバミューダの「グーグル・アイルランド・ホールディング」社に支払っている。

2006 年にグーグルは課税問題で米国内国歳入庁(IRS)と交渉し、ひとつの合意に達した。これはグーグル社の知的財産をめぐる問題であった。知的財産を外国にある子会社に供与することになり、その対価をどう扱うかに焦点が当てられた。

グーグル社が編み出したスキームとは、以下のとおりである。

グーグル社は、自社で開発したオンライン検索の技術、および広告に関する技術のライセンスを保有している。このライセンスを外国子会社に供与する。外国子会社はこのライセンスを用いてサービスを行い使用料を得る。この使用料を開発国(米国)に還流させれば35%の課税対象となるが、実際に入ってくるのはライセンスの供与料のみとなる。

これを「移転価格」(transfer pricing)操作と呼ぶ。

このタックス・スキームは、関係国(アイルランド、オランダ、バミューダ、米国)の税制の規定には抵触しないように仕組まれている。法的にはぎりぎりのところであるが、倫理的には真っ黒である。

グーグルの企業モットーは、“Don’t be evil” であるだけに、“Is Google’s tax strategy evil ?” という疑問や “Google’s evil tax dodge” という批判が出ている。また企米国内国歳入庁(IRS)の合意を獲得したことに対しては、“Google eats the IRS for lunch” と皮肉が囁かれている。

グーグルの広報筋は、「グーグルと似たスキームを多くのグローバル企業が行っている」と主張している。つまり企業努力の一環と言いたいようだ。たしかに「多くのグローバル企業が行っている」ことは間違いない。

開示された企業情報からも、アップル、マイクロソフト、アイビーエムなどテクノロジー関連企業が、似たようなスキームで、海外所得に対する実効税率を4.5%~25.8%に引き下げている。マイクロソフトはグーグルと同様にアイルランドからバミューダへの移転価格操作を行っている。フェイスブックは、アイルランドからケイマン諸島だ。

2009年、財務省は外国子会社に対して課税する提案を行った。内容は、外国収益の海外における移転を許容するループホールを塞ぐこと、外国子会社間の一定の支払に対して課税することである。この提案はジェネラルエレクトリック、ヒューレットパッカードおよびスターバックスなどの企業によるロビー活動によって押しつぶされた。

2010年2月にオバマ政権は多国籍企業に課税する提案を行った。今度の提案は、企業のオフショア所得移転と、外国子会社とタックス・ヘイブンとの移転操作に対する課税を打ち出した。ロビーストがキャピタル・ヒルに群がり、この提案も押しつぶされた。

巨大な多国籍企業の見解として「税負担が5%程度に引き下げられるならば、タックス・ヘイブンの資金を米国に戻してもよい」という言葉が報道されている。