中国外交にとって、南沙諸島問題は最大の恥部であった。
西沙諸島とは性格がかなり異なる。西沙諸島は鄧小平流の拡張主義にもとづくものであると同時に、中越間のルサンチマンを秘めた紛争であった。
それに比べれば、南沙諸島は何の申し開きもできない中国の野望にもとづく紛争であった。それはフィリピンをも敵とする二正面作戦であり、アセアンの道義的権威に泥を塗るような行動であった。それが大方のひんしゅくを買ったとしても、彼らにとっては問題ではなかった。アメリカがそこまでは出てこれまいという、およそ正義とは程遠い判断基準にもとづくマキャベリズムが支配していた。

それを推進した力は何だったのか、それは海底油田をおいて他にないだろう。
それは周永康・蒋潔敏をトップとする中国国営石油の闘いであり、中国国営石油をスポンサーとする軍部内の機会主義者の妄動であったといえる。戦前に軍部が石油を欲して南方へと軍事進出していった論理と全く同じだ。
彼らはその大義名分を得るために尖閣問題を積極的に利用した。そして南シナ海への進出を大国に対する戦いであるかのように描こうとした。自分を被害者であるかのように描き出そうとするのも戦前の軍部と同じ手口である。このやり方が怖いのは、いつの間にか本当に自分が被害者であるかのような錯覚に陥ることだ。「正当防衛」論ですべてが合理化される。

その危険が分かっていたからこそ、習近平新政権は満を持して中国国営石油への鉄槌を下したのだろうと思う。おそらくそれは乾坤一擲の大勝負だったろうと思うし、そのために党のすべての幹部が結集したのだろうと思う。
おそらくこの闘いを通じて習近平・李克強の路線は堅固なものとなると思う。江沢民派と鄧小平派の矛盾は基本的に解消されると思う。そして中国が起点となって、東アジアの新秩序づくりが一気に進んでいくだろうと思う。
その時日本はどうなるだろうか。はっきりしていることは、このままでは日本は取り残されるだろうということである。
イギリスを見ればはっきりする。イギリスは今やヨーロッパの孤児である。ドイツ+フランス+BENELUX ですべてが進行し、イギリスが蚊帳の外に置かれたように、中国+韓国+ASEANですべての物事が進んでいき、日本もアメリカのプードルとして軽蔑されるだけの存在に成り下がるだろう。
今や日本は鳩山時代に試みて挫折したアジア志向を強制される時代に移行しようとしている。