ヘイトスピーチは違法

ヘイトスピーチを違法とする判決が京都地裁でくだされた。

いずれは違法判決が出るとは思っていたが、どういう論理で違法とするかが興味ある。

赤旗の記事の見出しは「ヘイトスピーチは人種差別」というもので、そこまで踏み込んだかという感慨がわく。

記事によると、

在特会の一連の行動は、在日朝鮮人に対する差別意識を訴える意図があり、人種差別撤廃条約に盛り込まれた「人種差別」にあたる。

という論立てで、人種差別撤廃条約を判断の根拠としていることがすごい。

民事での判断は初めてだ。

これまでも、ヘイトスピーチは刑事裁判では威力業務妨害と侮辱罪で有罪となっている(2011年4月 京都地裁)。しかし刑事裁判では人種差別撤廃条約は適用しがたいだろう。

私は知らないが、人種差別を禁止し、これを犯した場合有罪となるような国内法があるのだろうか。なければ「侮辱罪」の拡大解釈で引っ掛けるか、野放しにする他ない。

そもそも刑法では、戦前の経験を踏まえ言論の自由に最大の保障が与えられており、この手の裁判は線引が難しい。たとえば私が「安倍首相の二枚舌」などと書いて、「侮辱罪」で引っ掛けられては大変困ることになる。

ともあれ、今度の判決は

1.民事で被害者を救済する道を開いた

2.「言論の自由の限界」ではなく「人種差別の禁止」という積極的概念で裁くことで、「人種差別」という不法行為のエンタイティを打ちたてた。

3.人種差別撤廃条約を法理として援用し、

4.(実際に判決が有用となるよう)高額の懲罰的賠償金を科した。

ということで、右翼にとっては相当手痛い判決となった。


市田書記局長は判決を歓迎はしているが、必ずしも“熱烈歓迎”してはいない。

市田さんが指摘する最大の問題は、ヘイトスピーチが司法以前の行政の問題であり、行政当局が対応をサボってきたという点にある。

市田さんによれば、国連の社会権規約委員会が日本政府にヘイトスピーチは憎悪表現を防ぐよう勧告した そうだが、これに対する対応は不明である。多分何もしていないのだろう。

司法での違法化もだいじだが、そのためには立法の側で何らかの対応がもとめられるだろう。裁判官が人種差別であることを論証するために、人種差別撤廃条約を援用しなければならなかったという点に、対応する国内法を整備してこなかった立法側の怠慢がある。

さらに言えば、その前に行政の措置で人種差別撤廃条約を実効化するための方策をとる必要がある。この裁判も判決までに3年を要した。被害者の苦痛を思えば、あまりに無策であり、隠れた意図をさえ感じてしまう。

立法・行政・司法の三位一体の取り組みが必要なのだ。それだけ人種の問題は根深く、厄介で、こじれると深刻化しうる課題なのである。

人種間の憎しみを煽るのは簡単だが、それを癒やすには大変な労力と時間が掛かる。日本人はこの問題に少し鈍感すぎるのではないだろうか。